「物語を作る」と言いましても
高校時代は演劇部に所属し、創作台本を3本制作して単独公演や地区大会で上演した経験がある。残念ながら単独公演はガラガラだったし、大会でも地区代表になることはできなかったが、ストーリーは観客や審査員、他校のライバルたちからも好評だった。
それから十数年経ったある日、ある文学賞に作品を応募した。高校時代に創作したストーリーをベースに、現代の社会情勢にそぐう内容にリライトしたものを出した。が、なぜか作者本人が認めるほどのクソつまらない出来になり、当然入賞もしなかった。「おかしいなー。一度上演したことがある作品だし、イメージは頭の中に浮かんでいるのになー。自分って小説書くの、向いてないのかなー」とモヤモヤした。
先日、フェローズ東京本社で開かれた「シナリオライターになりたい方のためのシナリオ基礎入門編1」に参加した時、講師の大原久澄先生から「シナリオと小説は違う」と教えられた。「シナリオは、例えるなら家を建てる時の設計図。作品に携わる人たちが同じイメージを持てるように作らなければならない」と言われた時、全てが腑に落ちた。
シナリオライターは理想の家を設計する「建築家」。一人で全部やるのではなく、誰かと一緒に作品を作り上げるのがミッション。そして「自分は小説家よりシナリオライターの方が性に合っている」と気付いた時、ちょっとホッとした。一概に「物語を作る」と言ってもさまざまな表現方法や様式があり、人によって得手不得手があることがわかった。そういえば、地元で会ったあるデザイナーの女の子が「私はパターン制作が得意で、チラシや雑誌のレイアウトはできるけど苦手なんですよ~」って言ってたっけ。
もし、自分がやりたいことに対する微妙な違いが見つけられずに悩んでるクリエイターがいたら、どうかそれぞれの得意分野に気付けますように。