新幹線ひかり号には「レーシングモデル」があるのだ。
新幹線に初めて乗ったのはずいぶん昔、確か中学校の修学旅行。
“ネーミング”なんて洒落た言葉を知らない頃ですけれど「ひかり号」という
名前のセンスに惚れました。
「ひかり」そして「こだま」
「光速」と「音速」
なんて真っ直ぐ、そしてマックス(ラッパーかっ)。
「夢の超特急」にふさわしい無限の未来が詰まったネーミングの名作ですよね。
東海道新幹線開業前の公募で選ばれたと聞きます(「ひかり」は1位)。
つくづく東海道新幹線は「ひかり」「こだま」を襲名制にすれば良かったのに。
「十三代目ひかり号、襲名披露の走り初め」とか。
1964年にデビューしたこの初代新幹線。いわゆる0系と呼ばれる車両ですが、
「幻のレーシングモデル」が現存するのをご存じでしょうか。
実は自宅の近くにあるんですけど今まで見たことが無かったので出かけてみました。
場所はJR中央線の国立(くにたち)駅。東京駅から小1時間のところに位置する
まぁけっこう郊外、都会の田舎です。
手前の三角の屋根が「旧 国立駅」。大正15年に作られた駅舎で線路の高架工事に伴って
いったん解体。現在は待ち合わせスポットとして元の場所に復元されています。
オリンピックを機に建て替えられた旧 原宿駅に次ぐ日本で2番目に古い木造の駅舎です。
駅を出て住宅街を歩くこと5分。まずは左手にウルトラマンにでも出てきそうな
「ド昭和」な香りのする立派な建物が見えてきます。JRの鉄道総合技術研究所です。
JR鉄道総合技術研究所(略称・鉄道総研)は旧国鉄時代に技術開発部門が置かれており
「ひかり号」はここで開発されました。
ちなみに見てくださいこの番地。
元は平兵衛新田という地名だったのですが1964年の東海道新幹線開業を記念して
「光町(ひかりちょう)」と改称されています。
その鉄道総研の向かい側に。お待たせしました。どどん!
これが幻のレーシングモデル新幹線 「951型」です。
地元の集会場「ひかりプラザ」の横にひっそりと静態保存されています。
新幹線 951型について少し説明すると、1972年の山陽新幹線の岡山駅までの開業にともなって
当時の営業運転での最高速度210km/hを超える250km/hを目指し、2両だけ製作された車両です。
どこがレーシングなのかというと、まず鼻先。
左が一般の0系新幹線、右が951型。鼻がすごく長いでしょう? これは空力をアップさせるため。
ボディも軽量化のためにアルミ合金製(!)。冷房装置も低重心化を図るために床下へ移動、
モーターも1.3倍出力アップへチューンナップなどなど、もう完全にレーシングカーなのです。
特に男はわかるよね。ランボルギーニ・イオタとか、鳥肌モノのスペシャルモデルの価値。
結果、この951型は1972年の2月24日、見事に国内最高速度の286km/hをマークします。
中にも入れます。入場手続きは不要で普通にふらっと入れます。見ていきましょう。
コクピット。座れます。色合いがいい。
コクピットの計器類。昭和ロマン。ネジ止めがツボ。
当時の座席。左手にはさまざまな備品とパーツ、速度記録の記念のレリーフも。
この951型。先に2両だけ製作されたと書きましたが1両はすでに解体されてしまっているので
ここに残る1両だけとなります。ほかに車両は無いのですけれど価値だけでいったら鉄道博物館に
引けを取らない超レアもの。近くを通る機会がありましたらぜひ立ち寄ってみてください。
ちなみに向かいの鉄道総合技術研究所はリニアモーターカーの開発にも関わっており
かつての試験車両が敷地内に置かれていたりします。なのでPerfumeのお三方もぜひに!!
「ひかりプラザ」
https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/shisetsu/shikanren/shiyakusyo/1003818.html