ソニー/ニューノーマル時代における、クリエイターのあり方を語る「Sony Creators Gate」の三者対話ライブ “trialog vol.10 -クリエイターと社会のディスタンス-”開催レポート
ソニー株式会社(以下、ソニー)は、黒鳥社のコンテンツ・ディレクター若林恵と次世代のクリエイターの育成を推進する「Sony Creators Gate」の取り組みとして、ニューノーマル時代に新たな価値を生み出すクリエイターたちの深層思考に迫る三者対話ライブ「trialog vol.10 -クリエイターと社会のディスタンス-」を、2020年10月10日(土)、完全オンラインで開催した。
trialogとして記念すべき10回目となる今回は、これからの時代に向けてプロトタイプに挑むクリエイターと、新しい価値を生み出そうとしているソニーのプロジェクトや事業に関わるキーパーソンが、 “クリエイターと社会のディスタンス”というテーマで、4つのセッションを通して議論。セッション1では「エッセンシャルとは何か」、セッション2では「クリエイターをどうエンパワーメントするか」、セッション3では「クリエイターのアクション」、セッション4では「クリエイターとデジタルプレイス」をテーマに、コロナ禍を通して大きく変化した社会におけるクリエイターのあり方をゲストと共に考えた。
また今回はコロナ禍を受け、無観客オンラインで開催。新たな試みとしてセッション2、セッション3は同時に行われるセッションのうち一つを選択して視聴する形式を採用し、台風14号の影響を考慮してモデレーター以外の登壇者は全員リモートで登壇とするなどオンラインの特徴を活かしたイベント構成に。イベント視聴者からも、多数の質問が寄せられ、議論はさらに盛り上がった。同じ空間を共有できない中でも、全員が初めて直面している社会の変化に対し、一体となってより良い未来を考えるイベントとなった。
加えてライブ動画配信の総視聴回数は、約150万回を記録。
ライブ映像やイベントレポートは、今後 trialog WEB サイトや trialog YouTube チャンネルにて公開予定。
■ trialog 公式WEBサイト:https://trialog-project.com/
■ trialog 公式YouTubeアカウント : https://www.youtube.com/channel/UCE60zHsZx9YZRNx4eGOYJmg
■SESSION 1
Essential|エッセンシャルとは何か─ 篠田ミル×山根有紀子×若林恵
このコロナ禍で感じたこととして、「#SaveOurSpace」という署名運動プロジェクトを立ち上げた篠田氏は、「ライブハウスなどの業界は、主体となる団体や組合が存在していないことが課題だと感じた。また、国の定義する文化の中にそれらが含まれていなかったことに気づかされた。」と語った。それを受けて、患者さんの願いを企業とのコラボレーションによって叶える「CaNoWプロジェクト」を発足したエムスリー山根氏は「医療業界は、医師会が存在する点では明確に異なる。ただ、患者さんがこの時期に病院に行きたくないという“通院控え”に、一番患者さんと距離の近い、街のお医者さんが困っており、新しいシステムの構築が必要な点では共通していると感じた。」と答えた。
若林から、「コロナ禍において“不要不急”という言葉が唱えられる中で、『文化は“不要不急だ”』と言う人もいたが、なぜ大事だと思うか?」と問われると、篠田氏は、「人間とそれ以外の動物や機械を分けるものは『文化』だけだと考えている。人間という概念を下支えするものであると思う。」と話した。
それに対し、山根氏は、「医療が成立するには患者さんの生きる意志が重要になってくる。その意志は、誰かと関わることで生まれ、明日何がしたいかという気持ちである。前に向かうエネルギーは医療だけでは提供できず、人間の根源となる文化からしか生まれないものだと思っている。」と医療の視点で考える、文化の重要性について話した。
■SESSION 2(選択式セッション)
Empowerment|クリエイターをどうエンパワーメントするか─ミツ・カンダガー×吉田修平×水口哲也
新作ゲームを試してもらう重要なリアルイベントが軒並み中止となっているこの状況において、インディーゲーム支援を行っている吉田は「オンラインで補完する形でサポートすることが必要」と述べた。この1年は、ゲームクリエイターも孤立した環境下に置かれ、試された1年となったが、変化し続けるゲーム業界の流れについて「昔に比べ、ゲームを制作するためのコストや敷居がとても下がった。それにより新しいクリエイターやプラットフォームが生まれ、様々な視点から新しいアイデアを生み出せるようになった。」と話す吉田。
それに水口も賛同し「インディーゲームが出てきた時、ゲームクリエイターはアーティストであると感じた。」と話した。
これを受けニューヨークでインディーゲームクリエイターとして活躍するミツ氏は「ゲーム業界には構造変化が必要。多様なバックグラウンドを持っている人や女性、有色人種の方に対し、もっと包摂性を高めるべきである。」と語った。
ニューヨーク大学でゲームデザインを教えるミツ氏は、リモート授業の中でどう生徒をエンパワーメントしているかについて問われると「世界中のゲームスタジオも同じ環境でゲームを制作していることを伝えている。最高な環境とは言えないが、この環境下が自身の成長に繋がることをポジティブに話している。」と答えた。
ゲーム業界の成長について問われると吉田は「ゲーム業界の中でマネジメントする立場の女性は増えてきているが、女性がゲームのクリエイティブをリードするという部分においては途上段階。ゲームを作る上でユーザー全体の知識が必要であり、知ることでより成功するタイトルを作ることができる。」と語った。
■SESSION 3(選択式セッション)
Action|クリエイターのアクション」─ YonYon×TAO×若林恵
ハリウッドを中心に女優、モデルとして活躍するTAO氏は、本年5月ごろから広がっているBlack Lives Matter(BLM)について、「ソーシャルメディアが発達しているが故に、その問題に対して自分のスタンスをとらないのは、発信する立場として好ましくないと考えている。」と自身のアクションへの姿勢について語った。そのことに、DJをはじめとしてマルチにクリエイターとして活動するYonYon氏は、「Black Lives Matter(BLM)のニュースで、アーティストもそれに関する発言が増えた。その発信に、アーティストは意見をするな、という反応も多かった。」とコメント。続けて、「アーティストは、一コンテンツと考えられ、一人間として認識されておらず、ポジティブな感情を発信することは許されても、怒りを伝えることは受け入れてもらえないと感じる。」とも話した。TAO氏はその意見に賛同しつつ、「日本は、和を乱すことを嫌がる傾向にあるし、自分も日本にいたらこのような発信はできていなかったと思う。それは今後アップデートしていく必要がある。」と話した。若林から「影響力を持つ者として、自分の仕事の領域において、どうアクションすべきだと思うか?」と問われると、YonYon氏は、「自分の意見については、アーティストとして、作品を通じて発信し、リスナーのみなさんに“世界を変えるきっかけ”になるような気づきを与えたい。」と話した。TAO氏は「俳優は、これまで作品に起用されないと発信することが難しかったが、ソーシャルメディアの普及により、変わってきた。ソーシャルメディアで発信を行いながら、今後はプロデュース業もできるようになりたい。」と話した。
■SESSION 4
Digital Place|クリエイターとデジタルプレイス─ 神戸雄平×アンドレ・ルイス×水口哲也
本イベントのテーマでもある、クリエイターと社会との距離感について問われると、PERIMETRONのメンバーでデジタルアーティストの神戸氏は「社会性を作品に落とし込むのは、非常にセンシティブ。テーマを自分の中に落とし込んで飲み込めた場合のみ作品としてアウトプットしている。」と話す。
またクリエイターが作品を作っていくまでの過程が、コロナ禍でデジタル上のみになっていることを受け、世界中のクリエイターが集まるクリエイティブ・コミュニティ「Trojan Horse was a Unicorn」の創設者であり、「体験すること」を大切しているアンドレ氏は、「現在はクリエイターに対してデジタルでの繋がりを提供することを考えている。それにより解決出来ることも増えている。」と述べ、その一つであるソニーと共同で発足した『Sony Talent League(ソニータレントリーグ) by THU』について、セッションの最後に紹介。「若い世代のクリエイターへ手を差し伸べ、才能を発掘するために発足した。」と話した。
これを受け、水口は「今年は、偶然がもたらすインスピレーションが減った気がする。様々な物がデジタルに置き換えられてきたが、置き換えることが出来なかった物も浮き彫りになった。」と話し、リアルとバーチャルの使い分けやクリエイティブの未来について問いた。「クリエイティブは、同じ空間を共有しなくても作ることが出来るが、若いクリエイターが繋がりを見つけていくうえでは物理的な世界が必要。」とアンドレ氏は述べる。神戸氏はそれに対し、「リアルな場がなくなったことで、作品を体験した人のリアルな熱を感じることが出来なくなっているが、デジタルの人間にとってフィールドがより広がり新しい世界へ繋がっていると感じる。」と話した一方で、「新しいツールに踊らされず、むしろ逆手に取るようにしている。」と自身の制作のこだわりについて語った。
○ trialogとは
trialog(トライアログ)は、次世代に向けた“対話”のプラットフォームです。trialogでは、世の中を分断する「二項対立」ではなく、異なる立場の三者が意見を交わす「三者対話」の空間をつくり、「ほんとうに欲しい未来はなにか?」について議論を深めながら、次世代に向けた自由でクリエイティブな生き方と、その未来のあり方について考えるトークイベントを実施。イベントの様子は、Sony-Stories公式Twitterアカウントとtrialog公式Twitterアカウントでライブ配信。視聴者はネット上からリアルタイムにコメントを投稿することで対話の場に参加可能。公式WEBサイトではアーカイブ映像を公開している。
■ trialog 公式WEBサイト : https://trialog-project.com/
■ Sony-Stories公式Twitterアカウント : @storiesbySonyJP (https://twitter.com/storiesbySonyJP)
■ trialog 公式Twitterアカウント : @trialog_project (https://twitter.com/trialog_project)
■ trialog 過去のイベント記事 : https://trialog-project.com/article/
■ trialog 過去のアーカイブ動画 : https://www.youtube.com/channel/UCE60zHsZx9YZRNx4eGOYJmg
〇Sony Creators Gateとは
ソニーは、多様なバックグラウンドや経験を持ち、新しい価値を創造する人を「クリエイター」と捉えています。そして、次世代を担うクリエイターのアイデアが世の中の人々のクリエイティビティに力を与え、新たなアイデアの創出につながることで、夢や好奇心と、感動に満ちた世界を実現できると信じています。「Sony Creators Gate」は、次世代のクリエイターに将来的な飛躍へのきっかけとなるような刺激的な機会を提供したいという思いから、これまでに、24歳以下の世代を対象とした「U24 CO-CHALLENGE 2020(ユーニジュウヨン コーチャレンジ ニーゼロニーゼロ)」、中学・高校生を対象とする「ENTERTAINMENT CAMP(エンタテインメント キャンプ)」、小学生を対象とする「STEAM Studio(スティーム スタジオ)」、そして次の世代に向けた「trialog(トライアログ)」を実施してきました。また新しいプロジェクトとして「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」と「Trojan Horse was a Unicorn」との取り組みを加え、その活動を広げています。
ソニーのPurpose(存在意義)は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことです。Sony Creators Gateの活動を通じて、次世代のクリエイターが創造力や表現力を発揮できる環境作りを支援していきます。
Sony Creators Gate公式サイト: https://www.sony.co.jp/creatorsgate/
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