「ゴミアーティスト? ボランティア?」ゴミを拾って絵を描く青年が四ツ谷駅〜新宿御苑駅界隈に出現
8月の終わり頃から、四谷駅や新宿御苑駅界隈などで、青年がゴミを拾い、それを画材にして絵を描いているところを目撃されている。青年は「Kota」と名乗る。彼は、アーティストなのか、ボランティアなのか、はたまたその両方なのか? 真相に迫るべく、本人にインタビューを試みた。
夏日のはざ間で、やや涼しい日の夕刻、三栄公園(東京都新宿区四谷三栄町)にその姿はあった。
─ こんにちは。いつもここで絵を描いているんですか?
「こんにちは。今日はここで描いているんですが、次はどこで描くか、決めていません」
─ いろいろなところで描かれるんですね。
「その日その日の天気や気分で変えているんですよ」
─ ところで、今はダンボールに描いているみたいですが、そういった物に描くのはなぜですか?
「あぁ、このダンボールは公園に捨てられていたんです。つまり、ゴミですね。ただのダンボールじゃなくて、ゴミ出身のダンボールであることは、僕にとっては重要です」
─ ゴミ出身のダンボールであることが重要なのはなぜですか?
「ある日、ふと、“それはゴミだけどゴミじゃない”というフレーズが頭に浮かんできたんですよ。誰かにとってはゴミ(不要な物)かもしれないけれど、別の誰かにとってはゴミじゃない(必要な物)ということって、物にも人にも出来事にも言えることだと思うんですが、人だったら、自分が誰かに必要とされていないと自覚しても、別の必要とされる誰かの元に自ら移動することができるじゃないですか。でも、ゴミ(物)だとそれができない。ゴミだってもしかしたら誰かに必要とされたいと思っているかもしれないのに。だから、僕のような旅絵描きが、そういったゴミを救済する機会をつくることには、多少なりとも価値があるんじゃないかって思うんですよね」
─ そんなことを考えてゴミに絵を描いていたんですね。“旅絵描き”っておっしゃいましたが、旅をされている方なのですか?
「いつでもずっと旅をしているわけではありません(笑)。でも、ほんの数日だとしても、チャンスがあれば、世界中どこでも行きます。ほとんどがひとり旅ですが、世界中どこに行っても、絵を描いていますね。旅先で出会う人とは歌と絵で心を通わせることができます。それは旅の最中に限ったことではないのかもしれませんけれど」
─ こうしてここで絵を描いている時間も旅なのかもしれませんね。
彼の話を聞いているうちに、周囲に子どもたちがいっぱい集まってきていた。
公園に遊びにきて、たまたまKotaさんとその作品を見つけて寄ってきたのだろう。
男の子も女の子も興味津々で、思わず訊ねている。
「これ、どうやって描いたの?」
「次は何を描くの?」
「いっしょにやらせて!」
子どもたちが投げかける問いかけは、大人のそれとは違う。
誰も彼の正体を聞こうとしない。
ゴミに描く理由も聞かない。
そんなことはさして重要ではないのだ。
「もちろん、OK! いっしょにやろう」
一瞬にしてゴミアート仲間が増えたようだ。
子どもたちが彼と絵を描くときのキラキラした眼差しに、この時代の希望を感じた。
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