グラフィック2023.07.13

【武蔵野美術大学 美術館・図書館】杉浦康平デザインアーカイブ「デザイン・コスモス」リニューアル・オープン!!

東京
学校法人武蔵野美術大学

Relaunch of the Website “Design Cosmos: Sugiura Kohei Design Archive”

図版1.

武蔵野美術大学 美術館・図書館では、グラフィックデザイナー杉浦康平氏(1932―)のデザイン作品、デザインプロセス資料、作品掲載誌、デザイン制作に影響を与えた旧蔵書などで構成する「杉浦康平デザインアーカイブ」を所蔵しています。杉浦氏の創作活動をほぼ網羅する特別コレクションです。その公開にあたり、インターネット版ヴィジュアル作品集「デザイン・コスモス」を2021年6月に開設しました。ウェブサイト上に三次元的な宇宙空間を創り出し、そこに浮遊する杉浦デザイン作品の世界を、誰でも自由に、探索し、動かし、選択し、驚き、遊び、学び、楽しむことができる、画期的なデジタル・アーカイブです。開設時には杉浦氏がセレクトされたブックデザイン作品186点を掲出しました。
 おかげさまで開設直後より大きな反響があり、デザインを学ぶ方や専門家だけでなく、一般ユーザーからのアクセスも多く、たくさんの貴重なご意見をいただくことができました。
 それを励みにし、さらなる充実を図るため、開設からちょうど2年にあたる2023年6月、「デザイン・コスモス」をリニューアルいたします!

図版2.

杉浦康平デザインアーカイブ「デザイン・コスモス」
武蔵野美術大学 美術館・図書館 所蔵
“Design Cosmos: Sugiura Kohei Design Archive”
in the Collection of Musashino Art University Museum & Library

https://collections.musabi.ac.jp/sugiura_kohei/

  • 杉浦康平の雑誌デザイン

今回のリニューアルでは、杉浦デザインの主核のひとつである「雑誌デザイン」を究明することを主題とします。
杉浦康平氏は、半世紀以上にわたり、雑誌デザインの可能性を探求し続けてきました。杉浦氏が事務所スタッフとともに手がけた雑誌デザインは、40誌、およそ2,000冊。建築、哲学、文化、伝統、民俗、教育、科学、アジア文化、政治、そして噂……など、その主題も広範囲に及んでいます。その多くは決まった形にとらわれず、月ごとに手を加えて変化にとんだ(変化しつづける)表紙デザインとなりました。
 杉浦氏が自身の雑誌デザインを振り返る機会となったのは、2004年に東京・銀座のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催された展覧会「疾風迅雷:杉浦康平 雑誌デザインの半世紀」です。50年以上にわたる雑誌の仕事を展望する場として企画されたこの作品展にあたり、手がけた雑誌デザイン作品をあらためて丁寧に見つめ、雑誌とはなにか、自身のデザイン語法とはなにかを分析/総括されました。そして、主要な34誌を取り上げて、デザイン解説を書き下ろしました(そのテキストは同名の作品集にまとめられました)。この時の振り返りが、当館「杉浦康平デザインアーカイブ」の端緒となっています。
 また、膨大な作品群から特定作品に感覚的にアクセスすることができる、インタラクティブな検索システムの開発がなされたのも、この作品展でした。文字情報ではなく、作品の書影画像をインデックス化することで、視覚的な作品選択が可能となりました。詳しい情報を持ちあわせていないユーザーでも杉浦グラフィズムの宇宙に容易に飛びこんでいける操作性を備えたこの検索システムは、2004年当時、ひじょうに画期的なものでした。そして、このシステムこそが、当ウェブサイト「デザイン・コスモス」の設計思想となるものです。
 「疾風迅雷」展は、杉浦氏にとって自身のデザイン語法を振り返る初めての作品展だったこともあり、並々ならぬエネルギーが注がれました。
 そのヴァイタリティが、20年の時を経て、「デザイン・コスモス」に再結晶します!

  • リニューアル改変ポイント

作品コンテンツを新規追加するだけのバージョンアップにとどまらず、あっと驚くたのしい仕掛けも施しました。サイトの顔(トップ画面)さえも「ただならぬ雑」がうごめきざわめく宇宙空間として創生し、様変わりさせています。これは、杉浦康平氏が雑誌デザインと対峙した、造形思考そのものを表象します。主な改変ポイントは、以下の通りです。

①作品カテゴリ〔雑誌〕の新設
作品の書影画像が浮遊する宇宙空間には、既存の作品カテゴリ〔全集・シリーズ〕〔単行書〕〔美術書・写真集・事典・辞典〕に加え、〔雑誌〕を新設します。当ウェブサイトでは、手がけた雑誌デザイン40誌のうち杉浦氏自身が特に重要と判断された20誌を取り上げます。さらにデザイン手法に特徴がある巻号30点についても独立させて詳述。つまり宇宙空間には雑誌メイン表紙20点と巻号30点の計50点の雑誌作品書影画像が新規に浮遊します。

②雑誌宇宙のギミック
作品カテゴリ〔雑誌〕では、雑誌デザイン作品のメイン表紙20点を〈惑星〉として宇宙空間に浮遊設定。そのうえで、各タイトルでデザイン手法に特徴ある巻号を〈衛星〉に見立て、惑星であるメイン表紙の周りを公転するというギミックを施しています。

③浮遊スタイルのバリエーション
宇宙空間における作品書影画像の浮遊スタイルのバリエーションを見直し、〈衛星〉の公転軌道がより明確になるCircle〈円形浮遊スタイル〉を新設。これにともない、既存のSphere〈球体浮遊スタイル〉とSpace〈ランダム浮遊スタイル〉もチューンアップしました。宇宙空間の中央にある〈センターキューブ〉を操作することで浮遊スタイルを切り替えられます。

④デザイン手法インデックス
当ウェブサイトは、杉浦氏独自のデザイン手法から作品にアプローチすることができるのが最大の特長です。作品カテゴリ〔雑誌〕の新設にともない、〈デザイン手法インデックス〉を全面的に増補改訂しました。デザイン手法の一覧から、既存のブックデザイン作品と新規追加の雑誌デザイン作品を横断する探索をたのしむことができます。

⑤遷移ボタンのデザイン刷新
各作品の詳細情報ページへ遷移する際に押下する〈インフォメーションボタン〉を杉浦グラフィズムのテイストを盛り込んだ新デザインに刷新。より一層ウェブサイト全体が一貫性のあるデザイン体験となります。

⑥作品情報
作品の書誌事項は、当館「杉浦康平デザインアーカイブ」所収の作品現物にあたる調査により厳密に記述しました。なお、各誌の刊行期間は杉浦氏がデザイン担当した期間を記しています。

⑦作品解説
新規追加する雑誌デザイン各作品に付与する解説は、杉浦氏が作品集『疾風迅雷』をベースにして大幅な加筆修正をおこなった、当ウェブサイトでしか読めないオリジナルテキスト。

⑧作品ギャラリー
雑誌デザイン各作品の詳細情報ページには、当該誌の巻次表紙画像を可能な限りふんだんに掲出。高精細な書影画像が織りなす、杉浦雑誌デザインをめぐるギャラリー・ツアー。

⑨解説動画
既存のブックデザイン作品と同様に、雑誌デザイン作品にまつわる解説動画を掲出。立体的に展開される3Dアニメーションにより、あたかも現物を手にとっているかのように、作品に秘められたデザイン手法を直感的に理解することができる。

⑩寄稿
デザイン評論家臼田捷治氏が当ウェブサイトのリニューアルのために書き下ろしたエッセイ「雑誌デザインの座標軸を多元的に指し示す」を収録。

⑪Loading画面
読み込み時のLoading画面は、杉浦ブックデザインを象徴する『脈動する本』アイコンが回転するムービーから、雑誌デザインを象徴する『疾風迅雷』アイコンを掛けあわせた新作ムービーに差し替えました。

知れば知るほど、驚異の杉浦コスモグラフィア。
より一層魅力あるデジタルアーカイブに甦生した「デザイン・コスモス」。
インタラクティブな宇宙空間にあそび、独創のデザインワールドを、ぜひご堪能ください!

  • 杉浦康平(すぎうら・こうへい)略歴

1932年9月8日東京生まれ。日本のグラフィックデザイナー、アジアの図像学研究者、神戸芸術工科大学名誉教授、同大学アジアンデザイン研究所(RIAD)顧問。意識領域のイメージ化で多元的なデザイン宇宙を切り開き、レコードジャケット、ポスター、ブックデザイン、雑誌デザイン、展覧会カタログデザイン、ダイアグラム、切手デザインなどの第一線で先端的かつ独創的な活躍を展開。2008年に手掛けたデザイン作品、デザインプロセス資料、旧蔵書など創作活動をほぼ網羅する一式を武蔵野美術大学 美術館・図書館に寄贈し、「杉浦康平デザインアーカイブ」を構成。1997年に毎日芸術賞受賞、紫綬褒章受章。2019年に旭日小綬章受章。

本記事に関するお問い合わせ:学校法人武蔵野美術大学

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