独特の世界観と映像化ですべてがグレードアップした『映画 えんとつ町のプペル』を知らなかった自分にドロップキックかましたい
世の中、話題になってて名前は聞いたことあるけど詳細は知らない……って作品が結構ある。私の中では「えんとつ町のプペル」がダントツ。お笑い芸人のキングコング・西野亮廣氏が関わってるらしいなー……程度の認識で、今回、試写会のお声がかかるまで西野氏が原作者という事実を知らなかった。そして失礼ながら、同作について「絵柄かわいいけど作中で言ってることは意識高い系=キラキラで疲れそう」という印象しかなかった。
……という、試写会参加前の自分にドロップキックをかましたい。ごっつええ話やんこれ!!
映画観た後にWeb上で無料公開されている原作絵本を拝見したが、映画化する過程の中でどうしても組み込まなければなかった修正・変更・追加点が「改善」になっていることに気付いた。つまり、より楽しくわかりやすく、エモーショナルにグレードアップしているのである。
原作ファンによくある「映像化した時に変な改変されてショックだった、納得いかない」ということは、この作品においてはあまり起こらないだろう。絵本の世界がそのまま飛び出した世界観から、製作サイドの原作に対するリスペクトを感じる。そういう作品って観客も安心して見ていられるよね。
ストーリーの流れは原作通りだが、先にも述べた通り映像化の過程の中でいろいろな部分がアレンジされている。新たに付加された要素を言葉で表すなら、切なさ・儚さなどという「陰」だろう。
希望を信じ続ける中で、受け止めなければいけない苦しみや悲しみがある。描き方によってはストーリーが暗く重い方向に転がりかねないこの要素を、そうならないようバランスを取って伝えたい・表現したいポイントを抑えつつ、作品により深みを持たせられている部分も素晴らしい。泣ける。
全編3DCGで製作されているが、CG特有のヌルヌルした……じゃなくて、滑らかな動きが、絵本では伝えきれなかったであろう疾走感や繊細な変化を表現していて、あっという間に世界観にのめり込んでしまう。
そして驚いたのはキャラクターに声を当てた豪華俳優陣。俳優メインで活躍している人が声優やる! ……と聞くと「慣れてないせいで棒読み演技になり、残念クオリティーになるんじゃないか」と懸念する映画ファンが少なからずいる。
しかし、プペル役の窪田正孝氏やルビッチ役の芦田愛菜氏をはじめ、各演者と担当キャラクターの個性がいい感じに混ざり合って一人ひとり輝いていた。演技も違和感を感じることなく、むしろ映画が終わってパンフレットを見返すまで彼らが俳優だったことを忘れてたくらい。
窪田氏に関しては「この前観た映画ではヤバい殺し屋の役で、めっちゃ銃連射してたのに……」と感心(?)するほどだった。俳優ってすごいね。
余談だが、スチームパンクと和を掛け合わせたような、独特の世界観が個人的にツボった。西野氏はこの世界そのものにも何か意味を込めているのだろうか。背景やキャラクターの造形などが非常に細かく描かれており、できれば静止画でじっくり拝見したかった。展示会とか開いてもらいたいなぁ……って、あるの!?
二度三度観れば、新たな気付きが得られるかも知れない。また、原作絵本と合わせて楽しむとおいしさ2倍。話の中ではハロウィンの時期だが、映画はクリスマスに公開。大切な人と、ぜひ。
【「映画 えんとつ町のプペル」】
2020年12月25日 ロードショー
▼出演
窪田正孝 芦田愛菜
立川志の輔 小池栄子 藤森慎吾 野間口徹 伊藤沙莉
宮根誠司 大平祥生(JO1) 飯尾和樹(ずん) 山内圭哉 / 國村隼
▼あらすじ
いつも厚い煙に覆われ、空を知らないえんとつ町。
煙の向こうに“星”があるなんて誰も信じていなかった。えんとつ掃除屋の少年ルビッチは、父の教えを守り、いつも空を見上げ、星を信じ続けていた。
そして、みんなに笑われ、ひとりぼっちになってしまった彼の前に、ゴミから生まれた、ゴミ人間プペルが突然現れる。これは、二人が巻き起こす、“信じる勇気”の物語。
▼作品概要
製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣
監督:廣田裕介
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:東宝=吉本興業
製作:吉本興業株式会社
(C)西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会