エンタメ各賞選出の愉悦と苦悩、この季節に審査員が思うこと
エンターテインメントに関わる記者や評論家らは毎年年が明けると、ある種の愉悦と共に苦悩も伴う作業に入る。各賞の投票の締め切りが迫ってくるからだ。音楽は年内の表彰が多いが、演劇・映画・ドラマなど演技系分野は1~3月の発表が多い。エンタメ全分野を守備範囲とする批評家の私も、演劇だけでも2つの賞や表彰作品の選定のお手伝いをしている。かつては日本レコード大賞の審査員を3年、上方漫才大賞の審査員を2年務めたこともあり、審査には慣れているが、どれだけ経験を重ねてもこの時期の苦しみはなかなか克服することはできない。昨年は新型コロナウイルス感染拡大のため上演本数が少なく、その苦悩はさらに深まる。
演劇の場合、見終わった後の余韻があるから、観劇直後の時点では作品に良くも悪くも偏った思いが残る。しかし選出や審査の段階では、もう一度すべての作品を並べて詳しい比較検討が行われ新たな魅力や欠点を見つけることもある。
審査員団の総意としての結果だけが表に出る賞も多いが、現在私が関わっているのはすべて名前と共にその選出内容が読者やファンにも明かされる。
あるミュージカルの賞など、誰を何位にしたかがすべて表になって発表されるため、SNSが発達した現代では、Twitterやブログで私がどのように票を入れたかが紹介されることもしばしば。もちろんすべての選択に自信を持っているし、その順位の根拠も説明できる。だが、ファンにとってはひとつひとつの結果が大きな意味を持つし、そのことはよく理解できる。幸い、異論をはさまれたりしたことはないが、審査員もまたそうした厳しい目や批判にさらされながら、真剣に取り組んでいるのだということは分かってほしいところ。
逆に1年の作品の中で各部門たったひとつしか選べない賞もある。その場合、なんとも悔しい思いをする。本当はわずかな差しかないはずなのに…。そんな思いが募ったからだろうか、私は4年前から日頃運営するブログで毎年「SEVEN HEARTS映画大賞」「SEVEN HEARTSドラマ大賞」「SEVEN HEARTS演劇大賞」を選出している。最優秀賞や優秀賞だけでなく、次点や佳作まで選び、より多くの作品が世間の目に届くように努力している。究極の個人が選ぶ賞だが、「独断や偏見・趣味を加味せず、あらゆる忖度を排した公平公正な目で判断」がモットーだ。3年も続けているとそれなりに知られるようになり、受賞をご自分の公式プロフィルに書き込む人まで出てきた。いろんな人の協力を得ながら、この賞をもっと大きくしていきたいと考えている。