虹をみたかい

東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ

昨日は、関東地方では朝から強い雨が降っていた。

夕方、所用を済ませほっとしながらカフェでぼんやりしていると、空がきれいに晴れ上がってきた。

 

ふと窓の外に目をやると、人だかりができていた。

何かなと思ったら、空には鮮やかな大きな虹。

思わず、飲みかけのコーヒーをそのままにして、自分も写真を撮りに行ってしまった。

ところによっては二つの虹がかかっていたところもあったようだ(ダブルレインボーというらしい)。

 

ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」の中に、こんなシーンがある。

いつ命を落とすかわからない、極限状態が続く強制収容所。

その日の労働が終わり、どろどろに疲れて果てているところにひとりの囚人からの「とにかく外に出てみろ!」と呼びかける声。

ようやく体を動かして外に出たフランクル達が見たものは、息をのむほどの夕暮れ。

誰かがつぶやいた。「どうして世界はこんなに美しいんだ」――――。

この本の中でも、大好きな場面だ。

 

このシーンと比べるものではないけれど、先日の地震やもう1年近く苦しめられているコロナなど、長い長いトンネルの中にいる気分でいる中、ほんのひとときの自然の美しさに慰められた気がしたのだ。

 

希望が持ち辛くはあるけれど、それでも希望は持っていていいよと言われた気がして、単純ながら、朝よりも元気になってカフェを出たのであった。

プロフィール
ライター
かつらひさこ
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、7年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。

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