2021.02.16
虹をみたかい
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
昨日は、関東地方では朝から強い雨が降っていた。
夕方、所用を済ませほっとしながらカフェでぼんやりしていると、空がきれいに晴れ上がってきた。
ふと窓の外に目をやると、人だかりができていた。
何かなと思ったら、空には鮮やかな大きな虹。
思わず、飲みかけのコーヒーをそのままにして、自分も写真を撮りに行ってしまった。
ところによっては二つの虹がかかっていたところもあったようだ(ダブルレインボーというらしい)。
ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」の中に、こんなシーンがある。
いつ命を落とすかわからない、極限状態が続く強制収容所。
その日の労働が終わり、どろどろに疲れて果てているところにひとりの囚人からの「とにかく外に出てみろ!」と呼びかける声。
ようやく体を動かして外に出たフランクル達が見たものは、息をのむほどの夕暮れ。
誰かがつぶやいた。「どうして世界はこんなに美しいんだ」――――。
この本の中でも、大好きな場面だ。
このシーンと比べるものではないけれど、先日の地震やもう1年近く苦しめられているコロナなど、長い長いトンネルの中にいる気分でいる中、ほんのひとときの自然の美しさに慰められた気がしたのだ。
希望が持ち辛くはあるけれど、それでも希望は持っていていいよと言われた気がして、単純ながら、朝よりも元気になってカフェを出たのであった。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、7年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。