映画「子供はわかってあげない」レビュー|大人に染み入る夏休みの大冒険
2021年8月20日公開予定の映画「子供はわかってあげない」の試写に参加させていただいた。
-あらすじ-
水泳×書道×ガールミーツボーイ×アニヲタ×家族×迷!?探偵×本当の父探し×元教祖=まさかの超 青春映画♡
高校2年、水泳部女子の美波(みなみ)はある日、書道部男子のもじくんとの運命の出会いをきっかけに、幼い頃に別れた父親の居所を探しあてる。何やら怪しげな父にとまどいながらも、海辺の町で夏休みをいっしょに過ごすが……
心地よい海風。爽やかに鳴る風鈴。…超能力!?そして、初めての恋に発狂しそう!
お気楽だけど、けっこう怒濤の展開。誰にとっても、宝箱のような夏休み、はじまりはじまり~
-レビュー-
これまで「夏休みの大冒険」を描いた作品は数知れない。思わず主題歌を口ずさみたくなってしまう「スタンドバイミー」に細田守監督の「サマーウォーズ」、個人的に印象深いのはミュージシャンと人生の残り火のような夏休みを過ごす少女を描いた「月とキャベツ」だ。
「子供はわかってあげない」もひと言で表現すると、夏休みの大冒険を描いた作品ということになる。
ストーリーの軸としては、母と弟と優しい義父に部活の合宿へ行くと嘘をついて、実の父親に会いに行くというもの。
内容はドラマチックで、人生の転機とも呼べる場面は多くある。しかし、緩やかに日常として受け止めていく登場人物たちに、変化を大冒険と呼ぶほど壮大で大それた様子もない。
主役の美波を務めるのは、少女らしさに少年っぽさもにじませた上白石萌歌ちゃん。
高校2年生、水泳に打ち込み、家ではお父さんとまったり大好きなアニメで泣くその「等身大」さが、映画を自然でリアルなものに引き立てている。
美波が練習しているプールから見えた、鍵が閉まっているはずの学校の屋上で出会ったもじくんとの距離の縮み方も共通の趣味であるアニメが核となっていて、ちょうど大人と子供の中間にいる高校生らしくほほえましい。
豊川悦司演じる新興宗教団体の元教祖だった実の父親の元で、はじめはぎこちなく戸惑いながらも、居心地の良さを感じていく美波。
あと1日、もう1日だけ。そんな、ずっと続いていきそうで、確実に終わりがくる夏休みそのもののように、父親との時間を過ごしていく。
連絡が取れなくなった美波を心配したもじくんが探しに来て(実際はスマホが水没しただけなのだが)、それを複雑な思いで迎える父も、家に帰ったあとに嘘を見抜いていた母親のあったかい言葉も、世界の優しさを象徴している。
劇中、美波と父親との会話でキーワードとなる言葉に「ミルフィーユ」があるのだが、映画全体が優しさのミルフィーユに包まれていて、登場人物たちが幾層に織りなす優しさは観る人の中にも流れ込んでくるだろう。
青春映画・初恋・成長。
この映画につくであろうハッシュタグを考えるとあまりに若いが、これは大人にこそ染み入るであろう夏休みの大冒険の物語だ。
出演:上白石萌歌 細田佳央太
千葉雄大 古舘寛治 / 斉藤由貴 / 豊川悦司
監督:沖田修一
脚本:ふじきみつ彦 沖田修一
音楽:牛尾憲輔
原作:田島列島『子供はわかってあげない』(講談社モーニングKC刊)
企画・製作幹事:アミューズ
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
公式サイト: https://agenai-movie.jp/
?2020「子供はわかってあげない」製作委員会 ?田島列島/講談社
配給:日活
8月20日(金)全国ロードショー!
8月13日(金)テアトル新宿先行公開