カ・フェ・グルイ
ここ最近のわたしは慌ただしい納期の合間に暇を見つけては、カフェに心と舌を癒されに行くのが楽しみのひとつだ。
郷土のスター・浜辺美波ちゃんが実写版の蛇喰夢子を演じた「賭ケグルイ」よろしく、おしゃれで雰囲気のよいカフェについつい「滾(たぎ)ってしまう」完全なるカフェグルイである。
総務省統計局が令和2年度の家計調査平均として発表したデータによると、金沢はケーキやチョコレート、和菓子の年間支出額が全国で1位、コーヒー・ココアの年間支出額も全国で2番目に多いらしい。金沢市民である以上、美味しいコーヒーとスイーツが楽しめるカフェは避けて通れないカルチャーなのかもしれない。
なんて語っておきながら、わたしがカフェ好きになったのはここ1年の話で、そもそもカフェグルイな友人に連れられて人気のカフェを何軒か回ったからだ。わたしなんぞ、もともとは甘ったるいケーキよりも肉やラーメンのほうがよっぽど心惹かれる、スカートを履いた中身はおじさん、もしくは食べ盛りの男子である。
インスタグラムで話題のカフェや新しいお店を常にチェックしている友人は、何年も前からランチの約束をするたびにおすすめのカフェやスイーツショップをわたしにプレゼンしてくれていたのだが、「カフェ=映え重視で味微妙」という偏見をもっていた私は気乗りがしなかった。
しかし、今年でついにわたしも40代。ホテルのランチビュッフェが大好きだった時期を過ぎ、結局そんな食べられないよね…というアラフォーとなってようやく、彼女がおすすめしてくれたカフェに足が向きはじめた。
友人に連れられていくつかのカフェに行くたびに、わたしは各店の個性の強さや雰囲気、偏見を覆す「見た目だけじゃない」料理やスイーツに驚きの連続である。
古民家をオーナー自らの手で改修した、美味しいカヌレのカフェバー。
白山麓の牛舎をリノベーションした、薪ストーブがほっこりするカフェ。
金沢を流れる浅野川を眺めながら、旬のケーキを楽しめるスイーツショップ。
韓国テイストで映え重視なのに、ブラウンチーズがたっぷりかかったクロッフルが絶品の可愛いお店。
ひがし茶屋街近くの卯辰山にある人気のカフェでは、涙が出そうなくらい美味しい「りんご飴」に出くわした。
農家から直接取り寄せているという糖度の高い新鮮なりんごに、パリッパリの飴とふんだんにまぶしたココナッツ。わたしの2021年美味しかったものランキングの首位に年末にして断トツ躍り出たほどだ。
りんご飴という食べ物こそ、見た目だけで美味しくない食べ物ランキング1位だったのに、くうッッ…!
カフェの良さは美味しいラテやスイーツだけじゃなく、日常を離れた空間のそのひとときだと思う。こだわり強めの各カフェは、町家や古民家、自然豊かなロケーションが多い地域柄も相まって、非日常感を醸し出しつつ、決して堅苦しくない居心地のよい空間を作り上げている。
まだまだカフェビギナーのわたしだが、2022年も「お茶」文化の根強いここ金沢で存分にカフェグルイを楽しんでいきたい。