マーチやで!「町家の日」
3月8日は「町家の日」であったらしい。
3月8日=マーチ(3月=March)ヤで!ということで、2016年に制定されたそうだ。人情味あふれる語呂合わせになんだか和んでしまう。
これまで空襲や大災害の被害を受けてこなかった金沢も町家が点在しており、町家カフェや町家ホテル、町家ギャラリーなどさまざまな業態の「町屋○○」へ取材に行く機会も多い。
そもそも町家というパッケージに対して魅力を感じるのは私だけではないだろう。
大正末期に建てられた町家に台湾の有名店が日本初出店する「四知堂kanazawa」
明治建築の町屋をレンタルシェアスペースとして利用する「Nigiwai Space新保屋」
金沢に現存する町家は「金澤町家」と呼ばれる。
しかし、まれに取材した先で「金澤町家」という表現に対し、「うちは金澤町家ではないんじゃないかなぁ」とか「この建物は町家というか古民家なので」と訂正が入ることもある。
毎度、ハテナと思いながらここまで来てしまったので、この機会に「金澤町家」とは何ぞやを調べてみようと思う。
江戸時代の終わりに建築された町家で実際にリノベーションした施工例を体感したり、町家に関する相談などができたりする「金澤町家情報館」のホームページによると、金澤町家の定義は以下のとおりだ。
-金沢市内にある伝統的な構造、形態又は意匠を有する木造の建築物のうち、本市の歴史、伝統及び文化を伝える建築物で、昭和25年の建築基準法(寺院・神社等を除く)の施行の際現に存していたものです。具体的には、町家、武士系住宅、近代和風住宅と呼ばれる歴史的建築物の総称です。- 金澤町家情報館ホームページより抜粋
つまり、昭和25年(1950年)以降に建てられた建物は「金澤町家」ではない。たとえば町家の特徴でもある格子窓や箱階段などがあっても、築70年未満の建物は「町家風」ということになる。
面格子と蔀戸-「金澤町家情報館」
箱階段-「金澤町家情報館」
ついでに、「町家」という表現のほかに、「武家屋敷」と呼ばれる建物にも出会うことがあるのだが、定義上は武家屋敷も武士が住んでいた町家ということになるようだ。
金沢三文豪徳田秋声ゆかりの武家屋敷を改修した町家ホテル「町の踊り場」
町家を使った店舗は外観の重厚感や歴史的な趣という一面に対し、内部は梁や土壁などをそのまま残しつつ、最先端の水回りや床暖房完備など近代的なギャップに驚かされることもしばしば。
「Nigiwai Space新保屋」のシェアキッチン
「金澤町家情報館」の浴室
町家を店舗として活用しているお店の方とお話すると、「建物の持つパワー」というワードが出てくることがある。
江戸末期から明治、大正、昭和初期。この令和の日本も随分激動しているが、幕末や戦争を乗り越えてきた建物たちには、たしかに時代を生き抜いてきた土地や人の力強さが宿っている気がする。
町家の日に関連したイベントとして市内の町家ギャラリーなどでは素敵な展示会も開催されているので、足を運んで堂々と佇む建物のパワーを感じたいと思う。