「和太鼓サスケ」コンサート 若き太鼓奏者たちの素顔と可能性に迫る
石川県に「和太鼓サスケ」というチームがいる。メンバーは18歳以下と若いながら、県内外でパワフルに活動する和太鼓集団だ。
6月18日に白山市で「和太鼓サスケコンサート2022~太鼓道~」を成功させた彼らを取材した。
和太鼓サスケは2003年に結成し、現在は最年少で中学1年生から高校3年生までの15人で活動している。
今年で19年目と歴史は長いチームだが、毎年高校卒業を迎えたメンバーは同時に和太鼓サスケも卒業する決まりだという。
今回はコンサート前に、最年長メンバーである高校3年生の4人に話を聞いた。
山田美琉(みる)さん
-太鼓歴15年 小学3年生で加入 繊細さと力強さを美しく体現するリーダー
長嶋鼓(つづみ)さん
-太鼓歴15年 小学3年生で加入 演奏中の笑顔は心から太鼓を楽しむ唯一無二の花
加嶋七海(ななみ)さん
-太鼓歴12年 小学4年生で加入 安定の締め太鼓と持ち前の「陽キャ」でチームの均衡を保つムードメーカー
須谷羽加葉(わかば)さん
-太鼓歴14年 高校1年生で加入 長身を生かした迫力の演奏が魅力 高校ではマーチングバンド部の部長も務めるしっかり者
和太鼓サスケは今年で19年目と皆さんが生まれる前に結成されましたが、4人が中心となり引っ張っている現在はどんなチームですか?
(以下、敬称略)
七海:初期の和太鼓サスケはクールで大人っぽい見せ方をするチームでしたが、今の和太鼓サスケは元気いっぱいの若さを大切にしており、180度変わったと思う。これまでの歴史は大切にしながら、今までとは別の魅力も楽しんでもらいたいという気持ちで活動しています。
美琉:ずっと変わっていないことで言えば、一打一打を大切にしながら太鼓を打ち込む点です。
皆さん太鼓歴は10年以上とキャリアは長いですが、今回のコンサートのサブタイトルでもある「太鼓道」にちなみ、これまでの和太鼓人生を振り返ってみてどうですか?
鼓:疲れたな、しんどいなという日があっても、練習に行って終わる頃には不思議と心が軽くなったり元気になったりするから、太鼓が心の支えになっていると思いますね。
七海:太鼓を始めて、自分の中にいろんな感情が生まれた。太鼓が人生の一部になっていると感じます。
美琉:和太鼓サスケが優先というか、ずっと太鼓中心の毎日になっていますね。
太鼓中心の毎日で「辞めたい」と思ったことはなかったですか?
美琉:今日はなんだか太鼓に行きたくないな、しんどいなと思うことは何回もあったけど、辞めたいと思ったことはないですね。
鼓:えっ、私は辞めたいと思ったことある!
七海:私も辞めたいなぁと思ったことあるよ。でもお盆休みとか長期休みとか太鼓がない時期にふと身体がうずうずしてきて、太鼓叩きたい!っていう気持ちになる。太鼓がある毎日が当たり前みたいな。
鼓:うんうん、それ!なんか息をするように太鼓をしていて、それが当たり前という感じ!友達に太鼓大変だねとか言われることもあるけど、別に大変でもなくて、部活とかなら大変かもしれないけど太鼓は好きでやっているって感じです。
羽加葉さんは4歳から別のチームで活動をされていましたが、指導されていた先生が病に倒れ、高校生で和太鼓サスケに移籍したのですね。
羽加葉:はい。前のチームはボランティアグループとして高齢者施設などの慰問コンサートを行う活動が主でした。和太鼓サスケでは全国のチームと切磋琢磨するジュニアコンクールに出たり、出演料を頂いてプロとしてお仕事をさせていただいたりする機会もあり、すごいチームに恵まれたなと。今までの自分の太鼓人生の中でも、新しい体験をたくさんしています。
今回のコンサートは「今までの和太鼓サスケ」と「新しい和太鼓サスケ」の2部構成になっていると聞きましたが、その狙いは?
美琉:1部はイベントなどでもよく披露することが多い曲を中心に選曲し、これまでの和太鼓サスケを見てもらえればと思います。
七海:2部は新曲も交えながら、世代交代を感じる見せ方になっているかなと。今年度卒業する私たち4人だけの曲の後に、次の世代のメンバーだけの曲が来るなど未来に繋げていく演出になっています。
美琉:全体としては、音が途切れないようにMCやつなぎの曲を入れるなど、盛り上がりが最後まで続くようにこだわったので注目してもらえれば。
七海: 1人1人がこれまで担当してこなかった楽器にも挑戦しています。全員がオールマイティにいろんな楽器ができるチームを目指し練習しました。
最年長メンバー4人の曲「ソメタキ」は、それぞれのソロパートも交えつつ1つの曲にまとまっているとのことで楽しみです。
美琉:最初の方は柔らかなイメージで朗らかに叩き、ソロパートの後は緊張感のある曲調に変わっていくのが見所です。
羽加葉:ソロの部分では皆で掛け声をあげ、お互いを盛り上げて楽しい雰囲気にしています。
七海:ソロパートは基本的に自分で考えているので、アレンジしたり毎回フィーリングで変えていったりするのが演者としての楽しみ方ですかね。
先ほど世代交代の話が出ましたが、和太鼓サスケ卒業後も皆さんは太鼓を続けていきますか?
鼓:私は関西の大学へ進学を目指しているのですが、学校の近くで活動するチームなどに入って続けていけたらと思っています。
七海:私は高3で一旦卒業しようと思っています。なんて言いながら、友達がみんな和太鼓なので(と周りを指さす)続けたいって思ったらまた始められるかなって。
美琉:僕はどんな形で太鼓を続けていくか、様々な可能性から考えているところです。自分で新しいチームを作るという選択肢も魅力的に感じます。
羽加葉:私はプロの和太鼓チームへの加入を目指しています。高校卒業後もさらに和太鼓のスキルを高めていければ。
コンサートでは幼い子どもから年配層まで幅広いファンが会場を埋め、太鼓4台を3人で横打ちする高度なパフォーマンスが印象的な「色鳥」で幕を開けた。
全国的なイベントでも演奏することが多い代表曲「NOROSHI」「信」などを披露していく。
愉快なリズムでスタートした最年長メンバー4人の「ソメタキ」はそれぞれの太鼓道を昇華させるように徐々に勢いを増し、これからのチームを担っていくであろう若いメンバーたちに交代する。
真っ赤に染まったステージで「紅の色」を演奏した次世代メンバーたちは、先輩に負けじと未来の和太鼓サスケの形を打ち示す。
「ソメタキ」
「紅の色」
10人の女子メンバーだけで叩く「Sore竹節」では振りや掛け声は女の子らしさ全開で可愛いのだが、竹バチを振り上げるその音はまるで爆発のようで凄みがあった。
「Sore竹節」
最後は全員で「山鳴り」、新曲の「春風」を打ち鳴らし、会場中のお客さんの手拍子を巻き込んで、勢い付いた空気感を最後まで高め切ったままコンサートは幕を閉じた。
終始、メンバー同士でアイコンタクトを飛ばし、見つめ合い、笑い合いながら太鼓を叩く姿が印象的だった。先輩後輩関係なく、チームワークの良さを感じさせる。
和太鼓サスケの演奏は何度見ても、初めて見た時の感動を呼び起こしてくれる。音や立ち振る舞いで地面や空気を振動させ、その場にいる人の心を震えさせる。
いつだったか、野外で演奏する和太鼓サスケに突然、通り雨が打ち付けたのを見たことがあった。ストップがかからない中、表情を全く変えずに太鼓を鳴らし続けたのは、今回インタビューに答えた彼らでもあった。
普段はどこにでもいる楽しそうな、そして不思議とのんびりとした雰囲気が共通する少年少女たち。
だが、バチを握りステージの上で「和太鼓サスケ」という名を背負った彼らのエイジレスな気迫や貫禄はなんだろう。世代交代でメンバーは変われど、技だけでなくチームの精神のようなものは確実に受け継がれていくのだろう。
今回インタビューに答えてくれた彼らも来年3月にはチームを卒業して、それぞれ新たなステージを進んでいく。そして、次の世代が新しい和太鼓サスケを作っていくのだ。
「可能性」 今回のコンサートで、そんな言葉が和太鼓サスケから見えた。
コンサートの様子は現在、YouTubeで無料アーカイブ配信中。
詳細は和太鼓サスケのSNSで発信する。Facebook/Instagram
撮影協力:横内 淳史氏