器の”映え”とは~『骨董物語』に寄せて~

福岡
ライター
kousaka
香坂

器の“映え”というものについて、ここ数年考えている。

 

なぜかといえば、心惹かれる焼き物に出逢っては「まあいくらあっても困りませんし……」と言い訳をしながら持ち帰る、を繰り返しているわりには、まったくと言って良いほど活躍させられていないからだ。器より料理の映えを追求しては?との話については、この際置いておくことにする。

故郷が佐賀なのもあって有田の陶器市に何度も足を運んだり、実家から譲り受けたりするうちに器や皿自体はどんどん増えていった。もちろんいずれもお気に入りばかりで、手に入れたその時には何を入れようか、と胸を躍らせていたのは間違いない。

 

それなのに、最近引っ越しを機に手持ちを整理してみたところ、おそらく7割程度の選手をベンチに座らせたまま放置していたことが判明した。

いや、一応ベンチ入りはしてもらっているのだ。しかしこのままでは、攻守ともにバランスの取れたスタメンを酷使するいっぽうであるばかりか、せっかく引き抜いてきた有力選手に愛想をつかされてしまうのではないだろうか。まあ愛想をつかされたからといって、うちのチームにいていただくしかないわけですが……本当にすみません。

 

特に実家の祖母が「うちでは使いきれないから」と持たせてくれた香蘭社の菓子皿など、結局あれから一度も使っていない……ような……。あんなに喜んでもらったのに! おばあちゃん、家族が少ないからと言っていたけれど、よく考えたらね。実家で持て余すものを更に家族が少ない我が家でどうにかするのは、どだい無理な話だったのよね。

 

かといって開き直るのももったいないので、どこかに良いヒントはないものか――と本棚を眺めていたら、目に留まったのが桐島洋子先生の『骨董物語』だ。

画像引用元:Amazon(https://www.amazon.co.jp/%E9%AA%A8%E8%91%A3%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E6%A1%90%E5%B3%B6-%E6%B4%8B%E5%AD%90/dp/4062134403

 

学生時代に装丁の美しさに一目惚れして購入した本だったが、思えば焼き物に興味を抱くきっかけとなった一冊かもしれない。

内容としては桐島先生の長年にわたるコレクションを紹介する、という一見シンプルなもの。ただ、骨董ひとつひとつに細やかなストーリーが添えられており、写真も文章も秀麗と称するほかない造りとなっている。

中にはアール・デコのフルーツ・コンポート(たぶん果物皿)といった作品も掲載されていて、それがあまりに洒落た佇まいであったため、なるほどいっそのこと飾ってしまうのも有りかもしれない、と一瞬血迷いかけた。飾る用の道具?ってどちらで買えるんですか?

 

昔はこういった書籍等を開いては、大人になったら少しずつこういう古き良きものを集めたりして……なんて空想を膨らませていたこともあったものの、骨董がいかに高尚な趣味か知った今となってはプラハもボヘミアン・グラスも夢のまた夢となってしまった。

――とはいえ、幸い無理のない範囲にも素敵な器が溢れているこの世界。

まずは手持ちを活かす方法を模索しつつ(器にとって本意ではなさそうでも、とりあえず積極的に普段使いを検討してみるとか)、これからも新たな邂逅に期待したいと思う。

プロフィール
ライター
香坂
オリジナル会葬礼状のライター業を経て、現在はWEB系のフリーライターとして活動中。漢字とひらがなのバランスに悩むのが好き。仕事におけるモットーは「わかりやすく、きれいに」。趣味はお酒・アイドル・展覧会鑑賞・化粧品・創作。

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