7月といえば博多祇園山笠!『飾り山』にみる博多人形の面影
地域ならではのお祭りには心躍るものだが、ある程度近い場所に住んでいても意外と足を運んだことがないお祭り、というのも中には存在すると思う。
私にとってそれは「博多祇園山笠」や「博多どんたく」である。もちろん決して興味がないわけではなく、むしろ行ってみたいと長年考えているのだけれども、なかなか機会がなく現在に至る。それこそ地元、と言えるくらい近ければまた違った感覚だったのかもしれない。
そんな私から見ても、山笠に関しては毎年時期が来るたびに「ああ、そろそろか」と感慨深い気持ちにさせられる。なぜかといえば、7月のはじめからしばらく見ることができる『飾り山』の存在があるからだろう。
飾り山は博多駅や天神駅周辺を中心として、計14か所で公開されている。この時期はお祭りの中でも「静の期間」とのことで、あちこちに飾られた走らない山笠をじっくりと眺められるのだ。
いずれも豪奢な装いではあるものの、ひとつとしてまったく同じ顔はしていない。一般的に“見送り”と呼ばれる裏側の飾り山にはアニメやドラマなどのサブカルチャーなどをモチーフにしたものもあり、細工の見事さだけでなく、その発想のユニークさにも驚かされる造りとなっている。(※1)
この飾り山、専門の職人さんがいるのだろうか?と気になっていたが、飾りは基本的に「博多人形師」の皆さんによって制作されているらしい。
博多人形といえば、繊細で奥ゆかしい表情が特徴の伝統工芸である。お祝い事で贈られることも多く、隣県の実家周辺でも、昔ながらのお宅の応接間にはたいてい飾ってあるイメージだ。何となくたおやかな風情の作品が印象に残っていた(※2)けれど、あんなに勇ましい武士の面差しや、チャーミングなキャラクターも表現できるとは…幅広さ、奥深さを思い知らされる。
かつては無給で弟子入りし、師匠の技を盗むために日々神経を尖らせたと言われる博多人形師。
飾り山の細やかな造形は、美を追求し、技巧を育み続けた先にある風景の一部に違いない。
飾り山は7月14日まで展示されるそうなので、近隣に足を運ばれる方はぜひ間近で趣向を凝らした作品たちを見上げてみてはいかがでしょうか?
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