友達に触っておきましょう。
うららかな春にアレなんですけど昨年の3月に友人が他界しました。
うららかな春なので“人は悲しいよね”みたいな話にはしません。安心してください。
告別式の日は花曇りで、どうしてこういう時っていつも生ぬるい空気なんだろうと思いつつ
お棺の蓋を閉める時間が来て「それでは皆さん最後にお顔を見てあげてください」と促されたので、
ついでに手を握ってあげようと彼に触れました。
その時ハッと思ったのです。彼に触れたことが今まであっただろうか? って。
彼は学生時代の友人で東中野の四畳半のアパートに暮らしていました。
友人たちと飲んでは彼のアパートに泊まり、冬は小さなコタツに大の男が4人も入るものだから
卍マークみたいになって朝まで過ごしました。
つまりはとにかく毎日のように一緒に飲んでいたわけです。
なのに彼との思い出に「感触」が無いんですよね。
顔の動きやクセはよく覚えている。声も覚えている。アパートで作った闇鍋のひどい味も
うっすらと覚えている。なのに彼に触れた感触は。。。あれ??
「醤油取ってくれよ」「おぉ」、「はいワリカンのお釣り」「おお」、
そんなやり取りは何百回もやったはずなのに感触の記憶が無い。
手くらいは触れていただろうに。ヤだなぁ怖いなぁ~(@稲川淳二)。
告別式の帰り道はずっとそのことで悶々としていました。
記憶を再生すればするほど彼は映像と声だけでまるで映画の中の人みたいだったから。
こういう「2次元かよ」ってよくある違和感なのでしょうか?
女性同士ってけっこうホディタッチをしているから男はわりとあるのかな?
ともあれ、なんだかもったい気分だったのです。取りこぼした後悔というか。
それから1年。一周忌を兼ねて今月3月の土曜日に当時の仲間と飲むことになりました。
飲み会の席で決めていることがあって、一人ずつしっかり強く握手をしてきます。
事前に説明しないと気味悪がられますけれど「こいつの感触」を覚えて帰ろうと思います。