春の訪れで思い出す「妖精」のおはなし~フラワーフェアリーズ~
そろそろ春の気配が漂ってきた昨今。
暦の上ではともかく、やはり雪解けから徐々に昼間の空気が暖かくなり、菜の花や桜の華やかな装いが目につくようになると「春だなあ」と改めて思う人は多いだろう。
この時期になると、個人的にふと浮かぶのがシシリー・メアリー・バーカーの『フラワーフェアリーズ』である。
シシリー・メアリー・バーカーは20世紀前半に活躍した児童文学作家で、フラワーフェアリーズは彼女の代表作だ。春、夏、秋、冬と四季折々の“妖精”たちが緻密に、そして鮮やかに描かれたその小さな詩集は、私が小学生だったころ、ピーターラビットの絵本等とともに並べられていた記憶がある。
※参照:フラワーフェアリーズ (フラワーフェアリーズ-花の妖精たち・四季の詩-) -Amazon公式サイト(https://www.amazon.co.jp/フラワーフェアリーズ-花の妖精たち・四季の詩-シシリー・メアリー・バーカー/dp/4766123999)
実はその当時は「きれいな絵だな」と感じるくらいだったのだが、時を経て書店で合本版を見つけた時には、えもいわれぬ感慨を抱いた。懐かしい、というよりも、むしろ「新しい」という感覚だったのだ。
彼女の描く妖精は、私たちにとってポピュラーな“Fairy”の様相をなしている。しかしそれぞれに化身となる花の特徴はしっかり捉えており、いわば近年流行の「擬人化」に近しいキャラクター造形だ。
それにしてもそもそも「妖精」って、何となく春の陽気のように暖かい光が差し込む場所にいるような気がするのはなぜだろう。静謐な場所、例えるなら冷えた湖等にそっと佇んでいるのは、どちらかといえば「精霊」とか。
このイメージは何なのか?と念のため調べてみると、厳密には“妖精”と“精霊”は違い、さらに妖精にはいくつかの種類が存在するらしい。
◆妖精……伝説や神話に登場する、人間と神の中間的な存在
- フェアリー:妖精、と訳される代表的な存在。小さな人型で羽根を持ち、性質は気まぐれでいたずら好きに描かれることが多い
- ピクシー:イングランドの民間伝承に登場する妖精で、尖った鼻と赤い髪の毛が特徴。性質はフェアリーと似ている
- ケルピー:スコットランドの伝承にある、水辺に住む妖精。主に下半身が魚のような馬として描かれ、人間を誘い込んで溺れさせるという残酷な性質も
- ゴブリン:大抵は人間より小さな姿で描かれ、とても個性的なルックスをしている。ファンタジー世界では悪役として描かれることも多いが、伝承では子どもが好きで、家の手伝いをしてくれるとの説も(ハリーポッターの屋敷しもべ妖精みたいなものか……)
- エルフ:ゲルマン神話に登場。森や泉などに住み、長命、あるいは不死で、耳が尖っているのが特徴。また、一般的には白い肌と色素の薄い髪を持つ美しい人型のイメージで描かれ、魔法の力を持っている(指輪物語等では、変質してゴブリンになった人物も……)
◆精霊……水や石など、万物に宿る神に近い存在(精気やエネルギーそのものを指す)
- ウンディーネ:水の精霊
- シルフ:風の精霊
- サラマンダー:火の精霊
- ノーム:地の精霊
※参考:留学DRIVE(https://www.enginnier.com/fairyland/)
※参考2:世界の神話・伝説(https://waqwaq-j.com/celtic/1106/)
その他、Wikipediaの該当ページ等
妖精は物理的に姿を現すことができるのもポイントで、精霊の一分類と捉える説もあるようだ。こうして見るとフラワーフェアリーズに表現されている妖精たちは、タイトル通り「Fairy」の括りであることが窺える。
精霊に比べて身近に潜んでいそうな存在だからこそ、人と同じように過ごしやすい場所で、気ままに暮らしていて欲しいと考えるのかもしれない。
ちなみに本書は、かつて『冬の妖精』を作る際、他と数を合わせるために削除された何人かの『夏の妖精』もすべて収録されているので、ぜひお気に入りのフェアリーを見つけてみていただきたい。
※キャプチャ引用元:ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/20220647152post-40561.html)