東京にきらめくそれぞれの愛を活写、『TOKYO, I LOVE YOU』

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから映画鑑賞はやめられない
阪 清和

きらめく光に包まれる巨大都市東京。それはひとつの生き物のように生命力を宿し、今日も人々の営みを見守っている。
東京タワー、新宿の高層ビル街界隈、お台場…と東京を象徴する街々でも、それぞれ人々の愛を原動力にさまざまな物語がきらめいている。

映画『TOKYO, I LOVE YOU』は、そんな東京の街を、親子、親友たち、幼馴染の織りなす3つのエピソードで俯瞰し、時には一つに絡み合う現代的な物語だ。
東京という街の魅力とそこに息づく人たちへの賛歌にもなっている。
本田翼がひょんなことから7人組ボーイズアイドルグループ「8LOOM(ブルーム)」の寮母を務めることになる2022年秋クールのTBS系ドラマ「君の花になる」でアイドルの一人タカラを演じて人気が上昇中の俳優、山下幸輝が主演を務める注目作。「君の花になる」で演じたタカラは弟キャラで可愛らしさが目立ったが、『TOKYO, I LOVE YOU』で演じるリヒトは自立して成長していく姿が印象的である一方、幼馴染たちとの友情の交歓には少年らしさも残し、山下の多彩な魅力を垣間見せてくれる。実際に数々のダンスコンテストで受賞歴を持つ山下を映し込んだようなリヒトに劇中で設定されたのはブロードウェイでのチャンスもつかむ将来有望なダンサー。

久しぶりに戻った東京で幼馴染のハル、ノア、ユージン、レイ、ダンと再会を果たすが、彼らが言い淀んでいたシモンの不在理由に愕然とするリヒト。脳腫瘍で余命が3か月だというのだ。若さに溢れた彼らは、それぞれの方法でシモンを救おうと立ち上がる。山下のダンスがふんだんに盛り込まれ、親友たちのライブも本格的。資金稼ぎという理由を離れて、それはもう一つの青春群像でもある。
東京を輝かせているのは弾けた若者たちばかりではない。娘への愛情が伝わらない父親の懸命な生きざま、バーチャルな世界で真実に出会う恋に不器用なオタクっぽい青年ら、それぞれの愛を丁寧に描き出す中島央監督の手腕が光る。

客観的なおかつ繊細なぬくもりに満ちた愛の姿には、サンフランシスコ州立大学映画学科を卒業するなど米国で映画製作を学んだ後、クローンと人間が対峙する近未来を描いた2作目の長編『シークレット・チルドレン』で注目された中島監督自身の東京や日本に対する思いも溶け込んでいそうだ。
山下を飛躍させる一作としてだけでなく、ネクストブレイク必至と言われている次世代ハーフモデル、加藤ナナの映画デビュー作、そしてアイドル出身の小山璃奈が本格的な演技を披露する作品としても注目されており、見どころ満載の作品になっている。

<ストーリー>

VR(仮想現実)の世界にはまるケン(草野航太)はある日、バーチャルな東京タワーの近くでアイという不思議な少女と逢瀬を楽しんでいた。幼馴染の女友達ミミ(加藤ナナ)とはなんでも言い合える仲だが、今日もデートの約束をすっぽかして大げんか。やがてVRは現実世界の未来と奇妙にリンクするようになる。
新宿の高層ビル群の界隈、キッチンカーを率いて40年のジョージ(オギー・ジョーンズ)は死別した妻との一人娘カレン(小山瑠奈)を大切に育ててきたが、いつしか疎遠になり、買ってほしいと頼まれた高価なカメラも買ってやれない。愛情も巧く伝わらなくなり、さびしい思いをしていた。
お台場ではニューヨークから帰国していた有望なダンサーのリヒト(山下幸輝)が幼馴染の親友の一人、シモン(松村龍之介)が脳腫瘍で余命3か月と診断されていることを知り、高額な手術費を工面するため、親友たちとそれぞれができることで一人当たり100万円を稼ごうと奮闘することになる。得意のダンスで賞金獲得を目指すなど若者らしい行動力で走り出した彼らだが、シモンにも急激な変化が訪れる。はたしてシモンを救うことはできるのか。
東京タワー、新宿界隈、お台場を舞台に3つのオムニバスが、時に交差し、東京にあふれる愛を描き出す。

 

『TOKYO, I LOVE YOU』11月10日(金)全国ロードショー

      

 

出演:山下 幸輝
   草野 航大 小山 璃奈
   松村 龍之介、羽谷 勝太、坂井 翔、下前 祐貴、島津 見、西村 成忠
   オギー・ジョーンズ、加藤 ナナ、奏 みみ
   長谷川 美月、テリー伊藤、田中 美里、他
監督・脚本:中島 央
エグゼクティブプロデューサー:齋藤 隆、中山 由衣、山本 泰宏 
プロデューサー:中山 友翔、中島 央
制作:株式会社ウィスコム
配給:ナカチカピクチャーズ
製作:「TOKYO,I LOVE YOU」製作委員会
特別協力:エアトリ
協力:港区
公式サイト:https://tokyo-iloveyou.com/

ⓒTOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち約18年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。円満退社後の2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞・テレビ・ラジオなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅・メディア戦略・広報戦略に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。雑誌・新聞などの出版物でのコメンタリーやミュージカルなどエンタメ全般に関するテレビなどでのコメント出演、パンフ編集、大手メディアの番組データベース構築支援、ガイドブック編集、メディア向けリリース執筆、イベント司会、作品審査・優秀作品選出も手掛け、一般企業のプレスリリース執筆や顧客インタビュー、広報戦略コンサルティングや文章コンサルティングも。活動拠点は渋谷・道玄坂、代官山、日比谷。Facebookページはフォロワー1万人。noteでは「先週最も多く読まれた記事」に20回選出。ほぼ毎日数回更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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