あなたのタルパは何ですか。 〜ぬいぐるみに支えられて〜
今年はじめ、ドラフト上位指名の期待のルーキーが合宿所入りする際、“マイぬいぐるみ”を抱えて入寮する姿が話題になった。くまモンやふなっしーなどご当地モノからアンパンマンなど有名キャラまで、厳つい男性アスリートの意外なワンシーンにホッコリした人も多いと思う。
かくいう私も無頼のぬいぐるみ好き。はじまりは、小学生のとき父が北海道出張のお土産で買ってくれたキタキツネだ。30年近くをともにする相棒が、プロフィール写真を飾っている。
以来、
○ 薄茶色のレッサーパンダ(ワニ専門動物園でなぜか売られていた)
○ 巨大な顔と身体の黒猫(家電量販店のUFOキャッチャーで捕獲)
○ 白いオコジョ(友だちが持っているのを見て同じものをほしくなった)
と定期的に新メンバーが加入しては、作業机の上ではしゃいでいる。
仲良し四人組
アンティーク・チェアの上で物思いにふける
彼らの存在を知人に明かしたところ、“タルパだね”と言い切る。
タルパ Tulpa とはチベット密教での霊的な概念で、作成者により固有の想念や人格を吹き込まれた人工生命を指す。アニメを例に出すと、タルパを実体化したキャラクターとしてポケットモンスターや妖怪ウォッチなどが分かりやすいだろう。涼宮ハルヒシリーズにも「情報統合思念体」なるタルパ相応のラスボスが登場する。
その知人も「もう一人の自分」を脳内にイメージングし、悩みごとや物事の吉凶を判断するとき、彼らに話しかけ、彼らから示唆と自信と活力を得るそうだ。知人は会社経営、私はサラリーマンだが、とくにクリエイター専業の方々は、タルパからインスピレーション(あまり好きになれない言葉だが)を受けて、(無)意識的に創作活動に投下する方が多いのではないかと推測する。
一説によると、いわゆる成功者にはタルパ保有者が多いらしい。ひたすら自立自存をかき立てる現代社会で、一段上位から自らを見つめ、導く存在を創出することの意義はうなずける。また、著名人が行く先々でぬいぐるみを持ち歩き徐々に市民権を与えられることで、私は堂々と未熟さの言い訳に使えるようになり、大変居心地が良い(苦笑)。
さて、あなたのタルパは何ですか。