建て替え迫る帝国劇場の魅力ぜひ目に刻んで、話題作・名作目白押しの2024年

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

帝国劇場が来年2025年をめどに閉館し、建て替えに入るのをご存じだろうか? まだ最終公演日が確定していないので、2025年に入っても上演が残っている可能性はあるものの、今年2024年は現在の2代目帝国劇場で年間を通じて演劇を観られる最後の年と言えるのだ。

帝国劇場の歴史は古い。1911(明治44)年に日本で初めての本格的な西洋式大劇場として東京・丸の内の皇居前に開場して数々の演劇を上演し、1955(昭和30)年以降は日本初のシネラマ上映館に転換。1964(昭和39)年に閉場した後、1966(昭和41)年2代目帝国劇場として生まれ変わった。

『風と共に去りぬ』の世界初の舞台化を実現した作品をはじめ、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『王様と私』、『ラ・マンチャの男』、『マイ・フェア・レディ』といったミュージカルが次々とヒットし、今や『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』、『エリザベート』、『SHOCK』シリーズがほぼ定期的に上演されるまさに演劇界の中心にある劇場だ。近年は、日本が誇るアニメーションや漫画から『千と千尋の神隠し』、『キングダム』初舞台化の聖地となったことも記憶に新しい。

この2代目帝国劇場の入る建物が老朽化などを理由に2025年をめどに隣の国際ビル(三菱地所所有)や出光美術館とともに一体的に建て替えられるのである。3代目はまだ概要が発表されていないため想像するしかないが、2代目の最後をこのまま見逃すのはあまりにももったいない。日本最高峰の舞台機構と音響設備を備えた劇場の世界をあと1年ちょっとの間にできるだけ多くの人に味わってほしいのだ。

今年2024年、帝国劇場では2月にあの漫画界の奇蹟と言われる名作の世界初演『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』を上演するのをはじめ、3月には、2022年帝国劇場で世界初演された『千と千尋の神隠し』が再演(4~8月には初の海外公演となる英国ロンドン公演も待つ)される。夏には昨年日本初演となった『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』が再演。不朽の名作『レ・ミゼラブル』も上演が決まっている。いずれも全席完売の可能性がある公演であり、チケットの争奪戦が起きるのは必至だが、なんとか入手して2代目帝国劇場の素晴らしさを味わってほしい。転売ヤーなどからは絶対に買わず、ぜひとも正当な購入に挑んでほしい。それだけの価値がある作品群、そしてそれだけの価値がある劇場だからである。

私自身もあの大舞台の上で森光子さんにインタビューをしたり、松本幸四郎(現・松本白鸚)さんが演じるドン・キホーテからあふれるほどの勇気をもらったり、女性ファンが客席の99%を埋める中でなぜか超人気男性アイドルからマイクを向けられたりするなど思い出が尽きない劇場だが、劇場のあちこちで感じられる歴史と革新の息吹をぜひ感じ取ってほしい。
ロビーには巨大な七色のステンドグラスやそこを透過した光を反射して輝くステンレス・スチール製のすだれ、流麗な日本屈指の大階段、本郷新による「喜怒哀楽」の仮面、脇田和作の壁掛けなど、建築・美術面での見どころもいっぱい。休憩時間の幕間も飽きさせない工夫があちらこちらに施されている。演劇ファンはもちろんのこと、たくさんの人を魅了する2代目帝国劇場を目に深く刻んでほしい。

プロフィール
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阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち約18年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞・テレビ・ラジオなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅・メディア戦略・広報戦略に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。雑誌・新聞などの出版物でのコメンタリーやミュージカルなどエンタメ全般に関するテレビなどでのコメント出演、パンフ編集、大手メディアの番組データベース構築支援、ガイドブック編集、メディア向けリリース執筆、イベント司会、作品審査・優秀作品選出も手掛け、一般企業のプレスリリース執筆や顧客インタビュー、広報戦略コンサルティングや文章コンサルティングも。活動拠点は東京・代官山。Facebookページはフォロワー1万人。noteでは「先週最も多く読まれた記事」に22回選出。ほぼ毎日数回更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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