巨大母艦と青春譚!『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』前章レビュー
謎の飛行物体と高校生の日常。
第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞に輝いた浅野いにお氏の話題作「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」がこの度アニメ映画化される事となった。
アニメーションディレクターには『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ演出や、SFジュブナイルアニメ『ぼくらのよあけ』監督の黒川智之氏、脚本には『けいおん』シリーズや『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズの吉田玲子氏など豪華メンバーを迎え、デデデデ初のアニメ化が実現。
本記事では3月22日公開予定の前章のレビューを紹介する。
日常と非日常の交錯。予測不能のデストラクション
3年前の8月31日。東京に謎の飛行物体が来襲した。
8.31と呼ばれるその出来事では、多くの犠牲者が発生している。
主人公は東京に住む女子高生、小山門出と中川凰蘭。
前半は、二人を中心としたごく平凡な高校生の日常が描かれている。
しかしながら、3年経った今も東京上空には母艦と呼ばれる謎の飛行物体が浮かんでいる。
母艦の様子が連日報道される一方でどこか他人事のように日常を過ごす市民。3年も経てば脅威も日常に変わるのだろうか。
門出の母親など、東京の汚染を恐れる人々もいるが、どこか過剰反応のように描かれている。何が正解かわからぬ中で生活を続ける人々。3.11やコロナ禍を経験している我々にとって、それらの描写はリアルに映るのではないだろうか。
突然の悲劇
門出と凰蘭、そして友人たちとの何気ない生活が長尺で描かれている。担任の教師に恋をする門出とゲームオタクの凰蘭。恋愛、友情、将来の進路。そんな彼女たちの日常の中で突然悲劇が巻き起こる。
計り知れない悲しみの中でも「日常」を続けようとするのは、彼女たちの強さか弱さか、はたまた8.31の強烈な体験が故か。
また、門出は8.31で父親が行方不明になっているが、悲しみに暮れる様子は描かれておらずどこか淡々としている。父との再会を諦めているのか、どこかで信じているのか。キャラクターの心情など想像の余白がある作品である。
門出と凰蘭の過去
凰蘭は不思議な少年と出会う。その少年は8.31で行方不明になったと言われているアイドル大葉圭太にそっくりの容姿。そんな大葉くんとの出会いで凰蘭に変化が…。
これまでの空気が一変、凰蘭の過去がシリアスに描かれている。門出と凰蘭の絆の原点であり、見る者を一気に引き込んでゆく。微笑ましい前半の生活描写とは違う、二人の過去。高校生の日常と、謎の侵略者という2つの点が凰蘭の記憶によって繋がりを見せる。
そしてこの先どのような展開を見せていくのか。後編への期待が高まってゆく。
侵略者とは結局何者なのか
相変わらず母艦は東京の空を占領しつつも、時は流れる。門出と凰蘭は高校を卒業し、新たな生活を始めることとなる。
謎の母艦と「侵略者」。彼らの本当の目的は何なのか。
東京、いや地球は彼らによって乗っ取られてしまうのか。
門出と凰蘭の過去は何を意味しているのか。
前編ラストシーン、晴天の空と無数の「侵略者」は本作の対称性を端的に表しているように感じる。「デストラクション」と名のつく本作、二人の物語はどんな結末を迎えるのか。
5月24日公開予定の後章も見逃せない。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
前章:3/22(金) 後章:5/24(金)
■キャスト
幾田りら あの
種﨑敦美 島袋美由利 大木咲絵子 和氣あず未 白石涼子
入野自由 内山昂輝 坂 泰斗 諏訪部順一 津田健次郎
■スタッフ
アニメーションディレクター:黒川智之
脚本:吉田玲子
世界設定:鈴木貴昭
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
色彩設計:竹澤聡
美術監督:西村美香
CGディレクター:稲見叡
撮影監督:師岡拓磨
編集:黒澤雅之
音響監督:高寺たけし
音楽:梅林太郎
アニメーション制作:Production +h.
原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
主題歌:
前章「絶絶絶(ぜぜぜ)絶対(ぜったい)聖域(せいいき)」ano feat. 幾田りら
後章「青春(せいしゅん)謳歌(おうか)」幾田りら feat. ano
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公式HP: dededede.jp
©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee