永遠の輪廻は続く、「Endless SHOCK」シリーズがラストイヤー

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

何事にも終わりがある。
しかしまさか「Endless SHOCK」に終わりが来るとは。

堂本光一主演のミュージカルとして、2000年の「MILLENNIUM SHOCK」から始まった「SHOCK」シリーズ。2013年3月に通算1000回を超え、今年4月に2000回を突破した。ミュージカル単独主演記録1位は堂本光一が自ら更新中だ。途中からは主演の堂本光一が演出を手掛けており、作詞や作曲を手掛けている楽曲もある。大阪や博多での公演が加わる年もあり、まさに堂本光一の活動の中心にあるのが「Endless SHOCK」なのである。

その珠玉のような作品に幕を下ろすことが今年2024年1月発表された。堂本が製作発表でそのことを初めて口にしたとき、報道陣からは一瞬の静けさの後にどよめきが起こった。それほど「Endless SHOCK」には「永遠」というイメージがあったからだ。
それは「Endless SHOCK」のストーリーも影響している。舞台はかつてブロードウェイでスターだった日本人女性オーナー(前田美波里)が支配人として経営するオフ・ブロードウェイの小さな劇場。そこで連日満員のショウを続けている日本人のキャスト・スタッフが中心のカンパニーを率いているのは、ずば抜けたスキルを持つコウイチ(堂本光一)だった。「より新しい表現」を求めて疾走する彼らにとうとうオン・ブロードウェイからのオファーが届いた。しかしそのことがもともと生まれていた小さな亀裂を大きくすることにつながってしまった。どうしようもない悲劇と、そこからの旅立ち。公演ごとに光一の魂はよみがえり、未来へと飛翔する。
この永遠の輪廻こそが「Endless SHOCK」をネバーエンディングな世界に昇華させた力であったことは間違いない。

そして、「Endless SHOCK」は常に新しかった。四半世紀もの長い期間上演されているからと言って、すべてが固定化した演出と一字一句変わらないせりふだけで続けられているというわけではない。常に細かい改良が加えられているほか、せりふだけでは伝わりにくいと判断すれば、その部分を歌にしてすれ違う心を表現したことも。せりふでは交互にしか喋れないが、輪唱のようにして組み立てればひとつの心情が互いの本音を混ざり合わせるというかたちで表現できる。必要とあらば堂本自身が創造した新曲を投入する。その能力と質の高さは堂本が単なる歌手・俳優ではなく、アーティストと言われるゆえんでもある。新たな共演者が新投入曲を生むこともある。
また、堂本以外の出演者が固定していないことも、「Endless SHOCK」が常に新しかったことに寄与している。特にライバル役は私たち観客に毎回、毎年新しいことを気付かせてくれる。なぜライバル役はコウイチとあれだけ対立したのか。ダークな感情をたった一瞬だけであっても抱いてしまうのか、より深堀りして考えることができるのだ。ライバル役を担った俳優の数だけ、心情の数はある。しかし、別人格だとは思っていない。ひとつの人格の中にこれだけの解釈と可能性が詰まっている。だから、しでかしてしまったことはあまりにも深刻だが、彼のまことの想いを思う時、ライバル役のことが不憫だが、愛おしくてたまらなくなることもある。ダンススキルが尋常ではなかった屋良朝幸やライバル役にあまりにもはまった上田竜也など、その人選の妙には感心させられるばかりだ。

ラストイヤーに対する報道陣やファンの喧騒をよそに、上演を続ける堂本は極めて冷静だ。しかし初日直前会見で話したように「いつものように上演できることが嬉しい」という堂本の表情は嬉しそうだ。新型コロナウイルスの脅威を以前ほど感じずに演じられる喜び、ラストイヤーも思いっきり演じられる喜びに満ちている。 コウイチの魂が天上に召されて消滅するたびに永遠の命を与えてくれた堂本光一。これからはファン自身が心の中でその永遠の輪廻を再生し続けなければならない義務を負ったと言えるだろう。その橋渡しの儀式が、8カ月かけて今まさに行われているのだ。

ミュージカル「Endless SHOCK」は2024年4月11日~5月31日に東京・丸の内の帝国劇場で「Endless SHOCK」の本編と、コロナ禍で生まれたスピンオフ版の「Endless SHOCK-Eternal-」を同時に上演。
7~8月に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで、9月に福岡市の博多座で、11月に再び帝国劇場で本編を上演する。
春の帝国劇場公演で「Endless SHOCK」の本編と、スピンオフ版の「Endless SHOCK-Eternal-」のどちらをいつ上演するかは下記を参照してください。

★公式サイト スケジュールページ:https://www.tohostage.com/shock/ticket.html?v2024

 

(※メインビジュアルはミュージカル「Endless SHOCK」とは関係ありません)

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター・MC
阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち約18年は文化部でエンタメ各分野を幅広く担当。2014年にエンタメ批評家・インタビュアー、ライターとして独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞・テレビ・ラジオなどで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅・メディア戦略・広報戦略に関する批評・インタビュー・ニュース・コラム・解説などを執筆中です。雑誌・新聞などの出版物でのコメンタリーやミュージカルなどエンタメ全般に関するテレビなどでのコメント出演、パンフ編集、大手メディアの番組データベース構築支援、ガイドブック編集、メディア向けリリース執筆、イベント司会、作品審査・優秀作品選出も手掛け、一般企業のプレスリリース執筆や顧客インタビュー、広報戦略コンサルティングや文章コンサルティングも。活動拠点は東京・代官山。Facebookページはフォロワー1万人。noteでは「先週最も多く読まれた記事」に23回、「先月最も多く読まれた記事」に2回選出。ほぼ毎日数回更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)。noteの専用ページ「阪 清和 note」は(https://note.com/sevenhearts)

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