金沢21世紀美術館で能登半島地震被災後初の「コレクション展」

金沢市
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

先日、金沢21世紀美術館の「コレクション展1」に行ってきました。

コレクション展は金沢21世紀美術館が年に2回テーマや作品を変えて開催する収蔵作品の長期展覧会で、当初は昨年11月18日から今年5月12日まで「コレクション展2:電気-音」が開催される予定でした。

しかし、1月1日に発生した能登半島地震により、展示室内の天井にはめ込まれたガラス約70枚が破損するなど大きな被害があり、開催中だった展示はすべて中止に。修繕やガラス天井の撤去作業のため、14室あるメインギャラリーや人気スポットの「スイミング・プール」などが利用できない状態となりました。

金沢21世紀美術館では6月22日から、「コレクション展1」と「Lines-意識を流れに合わせる」展で、6ヶ月ぶりに全館での展示を再開します。

今回の「コレクション展1」では、今年20周年を迎える金沢21世紀美術館のアイデンティティを象徴する作品が全68点、展示されています。「実は大型の収蔵作品も多い」という同館の特徴が伝わる展覧会となっていました。

まず目を引くのが、同館の収蔵作品で最大級となる全長19メートルの「ダプンタ・ヒャン:知識の伝播」です。


ザイ・クーニン《ダプンタ・ヒャン:知識の伝播》金沢21世紀美術館蔵

展示室を大胆に使い、籐や糸などの自然素材を用いて大型の船のようなインスタレーション作品が組み上がっています。シンガポールの作家ザイ・クーニンさんがシンガポールのルーツや歴史を調査した結果を表現しており、同館に収蔵されて初めてのお披露目となりました。

また、ガブリエル・オロスコさんの作品「ピン=ポンド・テーブル」もユニークです。


ガブリエル・オロスコ《ピン=ポンド・テーブル》 金沢21世紀美術館蔵

日常生活や既存のルールに手を加えることで新しい秩序を生み出していくことを制作意義とし、卓球台を4方向に開き、中心には水を張った池を配置して蓮の花を浮かべました。

入場無料の長期インスタレーションルームでは、金沢市在住の佐々木類さんによる「植物の記憶 / Subtle Intimacy 2012-2023」「Reminiscences of the Garden -from Jacob Knapp-」「Reminiscences of the Garden -from Jacob Knapp-」が観賞できます。

佐々木さんが10年以上かけて収集した植物を板ガラスの中に封じた「植物の記憶 / Subtle Intimacy 2012-2023」は、植物片だけでなく付着したり浸透していた土や水分も一緒に閉じ込められています。


佐々木類《植物の記憶/Subtle Intimacy 2012-2023》 金沢21世紀美術館蔵

身の回りの環境を視覚化した作品を通して佐々木さんは「かすかな懐かしさ」を表現しているそう。無機質なガラスの中で光を受けて透ける植物の美しさと土や気泡の確かな温かさ、個人的にはとても好きな作品でした。

美術館を一度出たところにあるプロジェクト工房には、藤浩志さんの「Happy Paradies(ハッピー・パラダイズ)」が広がっています。


藤浩志《Happy Paradies(ハッピー・パラダイズ)》 金沢21世紀美術館蔵 

藤さんは子どもたちが遊ばなくなったおもちゃを物々交換する「かえっこ」というワークショップを2000年から行っており、この作品は何度「かえっこ」しても誰からももらわれず残ってしまった大手ファストフード・チェーンのおまけのおもちゃでできています。

タイトルも作品も一見ハッピーなパラダイスをイメージしますが、よく見ると「Para〝dise〟」ではなく「Para〝dies〟」であるところから現代の消費社会への風刺が感じ取れます。

今回の「コレクション展1」では、輪島市の漆芸工房「雲龍庵」の北村辰夫さんや金沢美術工芸大学の学長・山村慎哉さん、人間国宝作家の寺井直次さんなど、石川県に由来する作家の作品も多く展示されています。

そのほか、2024年の開館当初に展示され話題を呼んだカールステン・ヘラーさんの「金沢の自動ドア」や、水槽に能登産の野菜などを浮かべ、傷む前に学芸員が食べるまでが作品の一環だという島袋道浩さんの「浮くもの/沈むもの」など、書ききれないほど見どころ満載!


島袋道浩《浮くもの/沈むもの》 金沢21世紀美術館蔵

「コレクション展1」は、9月29日まで開催されています。来月は「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」を紹介します!

—————————————————————————

金沢21世紀美術館「コレクション展 1」
期間:
2024年6月22日(土)〜9月29日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:
金沢21世紀美術館
展示室1~6、13、長期インスタレーションルーム、プロジェクト工房、デザインギャラリー
※プロジェクト工房は9月8日(日)まで

料金:
一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
65歳以上の方 360円
小中高生 無料
未就学児 無料
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで

休場日:
月曜日(ただし8月12日、9月16日、9月23日は開場)、8月13日、9月17日、9月24日

お問い合わせ:
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP