”猫”を愛でる――考えるほどふしぎな生きもの
猫って、どうしてこんなにも可愛いのだろうか。
もちろん万人に共通する感情ではないだろう。
しかし、長年猫が身近にいる身からするとつい親バカ的にそう思ってしまう。
そもそも私に関しては元々犬も好きだし小動物も好きだし、何なら大抵の生きものに愛着が湧く方ではあるものの、猫を見ていると何というか「人間と共存するというより、愛されるために生まれてきたのでは?」と錯覚するほど絶妙なフォルムだなあと考える。
古来はネズミ捕りをきっかけに人間との交流が始まったそうだが、少なくとも現代において大半の猫は日々気ままに餌を食べ、好きに動き回り、自らのタイミングで寝る。
寂しくなれば適当にその辺にいる家族の近くに寄ると、誰かしらが頭なり背中なりを撫でてくれる。
むしろこちらの方が構いたいからそうしている部分はあるが、正直その自由な生きざまに「羨ましい」と思った経験のある人も多いだろう。
他のネコ科の動物と比べても小型で、柔軟かつゆるやかな肢体を持ち、機嫌が良ければ普段のシャープな瞳をまるく整えてから、爛々と輝かせつつ飼い主を見てくる。
ぷうぷうと寝ている姿を眺めているだけでも有意義で、赤ちゃんってこんな感じかなあと思ったりもした。
とはいえ我が家の猫は御年15歳。人間に例えるともうおばあちゃんである。
毛並みは少しばかり変わっても、それでもなお衰えないビジュアル。
これは動物全般に言えることだけれど、すごいを通り越してずるい、とすら感じる。
先日母がふと「きっとこの子はもっと歳をとって、私たちのことが何も分からなくなっても可愛いだろうね」と零したのを思い出す。
福祉系の仕事に従事し、様々な家族と接する中で響くことがあったのかもしれない。
何も求めない。ただそこにいてくれるだけでいい。
そう思っていても、一度心を通わせた存在にはどうしても期待してしまうものだ。
猫は果てしない時を進化しながら、付かず離れず、人に愛される術を磨いてきたのかなあ……と想いを馳せた昨今だった。
【名画で鑑賞する猫】
猫は実物もいい、写真もいい。けれどもあえて絵画で楽しむのもいい。
というわけで、いつもと異なる視点から猫を愛でたい時におすすめなのが『名画のなかの猫』である。
幅広いアーティストが描いた猫の姿を編集した本著。
いずれも作者それぞれのタッチを落とし込みながら、実物の魅力も想像できる一枚となっている。
冒頭に「猫は家につく」という話が出ているが、作品を見ていても確かにその環境でリラックスしているのが窺えるな、と思った。
ちなみにお世話になっている動物病院の先生曰く「やむを得ず家を空けるとして、2泊3日までならペットホテルに預けず留守番させた方がいい。世話する人間がいないより、知らない場所の方が猫にはストレスになる」らしい。
逆に犬は人につく、とのこと。なるほど納得である。
気まぐれにつれなくされると切ないが、それもまた個性と割り切って、今後もできるだけ穏やかに過ごせる環境を作ってあげたい。
【参考文献】
アンガス・ハイランド、 キャロライン・ロバーツ著『名画のなかの猫』(2023年新装版発行・エクスナレッジ)