金沢21世紀美術館「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」展

金沢市
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢21世紀美術館で開催中の「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」展は、「Lines/線」をテーマに世界10か国16組のアーティストによる35作品を展示しています。

同展では、アーティストや鑑賞者それぞれに「線」の捉え方やつなげ方があり、多種多様なイメージの派生や分裂が繰り返されていく面白さを感じました。

会期中の金沢21世紀美術館エントランスには、ブラジル人の画家・彫刻家であるエンリケ・オリヴェイラさんが廃材を使って制作した「死の海」が展示されており、来場者に大きなインパクトを与えます。

エンリケ・オリヴェイラ《死の海》 2024年

本多の森や石浦神社を臨むガラス張りの美術館入口に大きな樹木が生え出したような作品は、エンリケ・オリヴェイラさんの画家=平面としての制作と、彫刻家=立体としての制作を織り交ぜ、植物のようでも動物のようにも感じられる、自由なイメージを観る人に求めています。

フランス人作家のマルグリット・ユモーさんは昆虫の複雑な社会を、蜜ろうやくるみの木といった自然的な素材を作品に取り入れ、表現していました。

マルグリット・ユモー《ハニー・ホルダー》2023

「昆虫は協同することで自分たちよりも大きなものを創り上げていく、そのつながりや力は人類がこの先の未来を生き残るヒントになるのでは」というメッセージが込められています。

ネオン管を画材とする横山奈美さんは、インドを旅した際に出会ったタクシードライバーやホテルの従業員など現地の人々に寄せ書きのように書いてもらった文字を、色とりどりのネオンで表現しました。

作品について話す横山奈美さん 横山奈美《Shape of Your Words [in India 2023/8.1-8.19]》2024

ネオン管と配線やフレームといった作品を形作るパーツそれぞれがお互いを支え合っているという点にも、注目してほしいと横山さんは話します。

地下駐車場から美術館へと登る階段には、サラ・ジーさんの「喪失の美学」が展示されています。

サラ・ジー《喪失の美学》 2004

本作品は紙、プラスチック、金属、木、ボトル、椅子、電球といった私たちの身近にあるものが組み合わされており、「混沌と秩序」が表されています。

また、オーストラリアの原住民の血を引くジュディ・ワトソンさんやルディンギンガティ・ジュワンダ・サリー・ガボリさんなど、祖先から紡ぐ民族の記憶や文化、生活を表現した作品も印象的でした。

この展示会をイギリスの人類学者ティム・インゴルドさんの思想からインスピレーションを受けて企画したという学芸員の黒澤浩美さんは「現代社会は地震などの自然災害や世界情勢などに深く傷ついている。直線距離を最短で目指した20世紀と比較し、早く点と点を結ぶだけのプロセスが果たして正しいのか、力をあわせて世界を結び合わせていくヒントになれば」と話します。

大陸や国境、地球との線、先祖や家族とのつながりという線、ゴミと美術品との線、隔てる線とつなげる線。

「自然の中に見出す手がかりを、どこまでも追求するアーティストらによってもたらされるもののほとんどが線に沿って進んでいる」とするティム・インゴルドさんの考えを確かに裏付けるような展覧会でした。

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金沢21世紀美術館「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」
期間:
2024年6月22日(土)〜10月14日(月・祝)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:
金沢21世紀美術館
展示室7~12、14、交流ゾーン

料金:
一般 1,200円(1,000円)
大学生 800円(600円)
65歳以上の方 1,000円
小中高生 400円(300円)
未就学児 無料
※本展観覧券は同時開催中の「コレクション展」との共通です
※( )内はWEB販売料金と団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで

休場日:
月曜日(ただし9月16日、9月23日、10月14日は開場)、9月17日、9月24日

お問い合わせ:
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線系のまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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