夏と歴史、戦争と今。
夏はできるだけ歴史を読む時間を取っている。
といっても、昔読んだ歴史の本をもう一度丁寧に読むとかそのくらいだが。
できるだけ淡々と事実のみを追いかけて、この流れしかなかったのか、どこかで流れを変えるチャンスは果たしてあったのか、などを考えたりする。
昨年、NHKで放送されたドラマ「アナウンサーたちの戦争」の劇場版が、今月公開された。
NHKのアナウンサーたちが戦時中にラジオを通じて行っていたことがテーマで、主人公の和田信賢アナウンサーを演じる森田剛さんの演技が凄まじく、自らのアナウンスで国民を煽りながら葛藤に苦しむ様子が素晴らしかった。
同じく今月、NHKで放送された「映像の世紀 バタフライエフェクト」では、戦争中の日米のプロパガンダ戦がテーマだった。
真実が映された映像も演出ひとつで「嘘」になり、それは「戦争に勝つために国民の戦意を高揚させる」を大義名分に正当化される。
言葉で映像で人々を煽り、敵に憎悪を向けさせることを国が行うとどうなるのかをまざまざと見せつけられた。
とはいえ、当時から何十年も経ち、この時何が起きていたかをある程度知ることができる令和の今から観ているから、「ひどいな」などと呑気な感想を抱けるのだが、有事が起きている時に冷静に考えることは本当に難しい。
怒りのスイッチが入ってしまうと、視野が狭くなるのは身に覚えがある。
SNSなど、誰かわからない人の嘘か本当かわからないエピソードで、喜怒哀楽の感情が揺さぶられているのはしょっちゅうだ。
79年前と今は何が違うのだろう。
誰が悪いという単純なものではなく、それぞれの国や人々の思惑、タイミングや行動などが絡み合って歴史は紡がれていく。
言葉にすると何か陳腐になってしまうが、年に一度は、できるだけ頭を冷静にして、平和について考える機会を持っておきたいと改めて思う。