興味がないものを吸い込んで
毎日なんとなく「ヒルナンデス」を観ています。
藤田ニコルがコストコで買い物をしたり、やすこがイケアの便利グッズを紹介したりを、昼メシを食べながら観ています。
という話をしたら
「そういうのもご覧になるんですね」(クライアント広報室勤務・30代女性)
「テレビは僕ほとんど観ないっす」(広告制作会社勤務・40代男性)
「は? 藤田ニコルが好きなん?」(生まれ故郷の友人・50代男性)
おおかたの反応としては“よくそんなもの観ますね”という含みが感じられました。ふむ。
じゃあ代わりに何観るんです? と訊いたらだいたいYouTubeでした。
私もYouTube、好きです。ギターや水泳の練習には欠かせないです。
観たいものだけ観たい時に観ることができるしね。YouTubeに限った話ではないけれど、そういう環境がみんなの普通になってそろそろ10年少々は経つでしょうか。
私も最近までテレビはほとんど観ませんでした。
最新のスイーツ事情に興味はないし、テーマパークでのデートファッションは予定がないので必要ない。
テレビには興味のない話題ばっかり多いんだよ、と感じてパソコンでネットばかり観ていた。
2年前のことでした。着物の宣伝の打ち合わせの最中に雑談で「水戸黄門」の話が出たのですね。
黄門様は越後のちりめん問屋のご隠居ですよね、なんて相づちを打っていたら横にいた30代の営業マンが
「そんな事よくご存じですね、時代劇がお好きなんですか」と。
いや時代劇に興味はない。けど子供の頃にお婆ちゃんと一緒に水戸黄門を観ていたらから、と返す私。
もうひとつ。やはり打ち合わせ中にカップヌードルの話が出たことがありました。
あれは昔、浅間山荘事件というのがあって軽井沢の近くの浅間山の山荘に連合赤軍が人質を取って立てこもったのよ。
寒い2月に起こった事件でさ、それで山荘を包囲する警察官たちに非常用の食料としてカップヌードルが
配られたんだけど、雪の中で立ったままおいしそうにカップヌードルをすする警察官たちがテレビ中継で繰り返し
放送されて、それまで人気の出なかったカップヌードルが飛びように売れて生産が追いつかないほどになったの。
答えたのはクライアントの専務さん。
「初めて聞きました。あと連合赤軍って何なんですか?」。
いや昔、父親や母親とたまたまコタツでテレビを観ていたから。あと俺も連合赤軍に特に興味はないというか
その事件があってどういう人たちなのか、ずっと後でやっぱりテレビで知ったんだ、と。
知ってるからエライい、知らないからダメ、ということではないです。ただ気づいたのは
「興味はないけど知っている事のほとんどはテレビが教えてくれた事」だったのですね。
知りたい事だけに自分からアクセスするネットのやり方だと情報や教養の「深掘り」はできる。しかも速く。
それはそれでマニアックな純度を高められるというか素敵な時間ではあるけれど、
「興味はないけどけっこう大切な事」や「ちょっとした会話で投げ返せるネタ」さらには「新しい興味との出会い」は
ネットではなかなか難しいかも、と気づいたのでした。
大げさな文章になってしまった。。ともあれ以来「特に興味の無いもの」と接点を持つべくせっせとテレビを観ております。
会社員だと同僚や後輩、上司、いろいろな世代や性別から新しい事を知るきっかけはあるのでしょうね。
けれどひとりで仕事をしている人にはコレ、けっこう良い効果があるかもしれません。
かくして「ヒルナンデス」を今日も観ている私。相変わらず「コストコには行かないだろうな」と思いつつ、
“今はまだ興味のないものを吸い込む時間”が不思議と心地良いです。