エキマトペをご存知ですか?駅の音を“見える”形に変える装置

東京
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日本文化×デザインあれこれ
いのうえ

「エキマトペ」という装置はご存じでしょうか。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は駅でのあらゆる音を視覚化した装置です。川崎市立聾学校の生徒たちのワークショップから生まれました。今回はそんなエキマトペを紹介させて頂きます!

エキマトペとはどんなもの?

エキマトペ公式サイトはこちら

「エキマトペ」という名前は、「駅(エキ)」と「オノマトペ(擬音語・擬態語)」を組み合わせた造語です。この装置は、駅構内で聞こえるさまざまな音を文字や手話で視覚的に表現してくれるものです。
例えば、ホームアナウンスの「キンコンカンコーン」電車がホームに近づく「ガタンゴトン」という音や、ドアが開く「プシュー」という音が、ディスプレイにリアルタイムで表示されます。さらに、駅のアナウンスも字幕や手話で示されるため、耳が聞こえにくい方でもその場の情報をしっかり把握できる仕組みになっています。

この技術は、富士通株式会社やJR東日本、大日本印刷株式会社などが共同で開発したもので、もともとは川崎市立聾学校の生徒さんたちとのワークショップから生まれました。「駅をより使いやすくしたい」という声に応え、誰もが安心して利用できる環境を目指して作られたそうです。技術の力で優しさを届けたいという思いが込められているんですね。

上野駅で体験できます

エキマトペはこれまで何度か実証実験が行われており、特にJR上野駅の1・2番線(京浜東北線と山手線)のホームで使用されています。2025年2月25日からはリニューアル版が登場し、現在も稼働中です。自動販売機の上に設置された丸いディスプレイが目印で、そこに「ビュウウウゥゥン」や「ガタンゴトン」といったオノマトペが表示される様子は、まるで絵本の1ページのよう。最新版ではデザインにもこだわりが加わり、上野駅らしいパンダのモチーフがさりげなく隠れているなど、細部まで楽しめる工夫が施されています。

実際に足を運んでみると、駅の喧騒の中でふと目に入るその表示に、心が和む瞬間があるかもしれません。

誰かに寄り添い、みんなに楽しい

エキマトペの素晴らしい点は、聴覚に障害のある方への配慮だけでなく、すべての人に開かれた体験を提供しているところです。例えば、雑音でアナウンスが聞き取りにくいとき、字幕で確認できると安心しますよね。また、電車の音がオノマトペで表現されると、「こんな風に聞こえているんだ」と新しい気づきが生まれることもあります。障害の有無を問わず、駅がより身近で楽しい場所に感じられるのです。

開発チームは「ダイバーシティ&インクルージョン」を大切に掲げており、2025年11月のデフリンピックに向けてもこの取り組みを広げたいと考えているそうです。技術を通じて社会に優しさを届ける、そんな願いが感じられます。

ぜひ一度見てみてください

もし上野駅にお立ち寄りの機会があれば、エキマトペをぜひ探してみてください。電車を待つちょっとした時間にディスプレイを見上げると、音が文字や手話で動き出す様子に心がほっこりするはずです。

エキマトペは、技術と優しさ、そして遊び心が融合した素敵な装置です。駅の音を“見る”という新しい体験は、私たちの日常に小さな驚きと温もりを与えてくれます。次に駅を訪れるとき、耳を澄ませるだけでなく、目でもその響きを感じてみませんか?

プロフィール
WEBクリエイター
いのうえ
WEBクリエイター(デザイン/コーディング/ディレクション) 官公庁系サイトディレクション、デザインの他、企業系大規模サイトリニューアル、ECサイト運営などに携わる。fellowsでのセミナー講師経験もあり。 ここでは個人的に情報収集・発信している日本文化とデザイン、映画レビューについて紹介します。

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