金沢仏壇青年部×アーティスト「再生と復活」展で表現した新しい可能性

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢・クラフト広坂では2月中旬から3月初めまで、金沢仏壇の若手職人さんと画家などの作家さんが作品を展示する企画展「再生と復活」を開催していました。

主催は金沢仏壇商工業協同組合青年部で、毎年「現代の仏壇と手仕事展」というタイトルで展示を行ってきたのですが、今回は心機一転、アーティストさんたちとコラボしての企画となります。

金沢仏壇青年部の職人さんたちはとっても気さくで、伝統を大切にしつつ現代の感覚やニーズを積極的に取り入れた仏壇・仏具を発表し続けています。

数年前に「現代の仏壇と手仕事展」を取材させていただいてCREATORS STATIONでも紹介したのですが、仏壇に対して抱いていた高めのハードルを軽々と越えていった「ミニ仏壇」に心を奪われたことが忘れられません。

「金沢仏壇」は加賀百万石の華やかさを象徴するような蒔絵や金箔細工、漆工芸などがふんだんに施されているのが特徴ですが、今回の「再生と復活」展でも伝統的な技術と新しい視点が融合した素敵な作品にたくさん出会えたので紹介します!

能登半島地震で被災した仏壇をリメイク

まず今回の展示で注目されていたのが、能登半島地震で被災して廃棄される予定だった古い仏壇をテーブルにリメイクした作品です。

地震により先祖代々受け継いだ仏壇を手放さなければいけなかったり、修繕しないと使えなかったりする人も多く、金沢仏壇商工業協同組合にも問い合わせが多く寄せられたとのこと。

仏壇は費用面でも気持ち面でも簡単に捨てられるものではなく、困っている方も多かったようです。

さらに昔から大切にされていた仏壇には職人さんたちから見ても「すごい」と感じるような細工や蒔絵が多く施されているそうで、形を変えても繋いでいってほしいという気持ちもあったと言います。

そこで、仏壇の扉や細工の部分などを家具の一部として残すというリメイク品を考え付いたそうで、今回はサンプルとして展示されていました。

避難や引越しなどで仏壇を手放すことになった人も、家具にリメイクすればこれから先も長く引き継いでいけるかもしれません。

金沢仏壇7職の若手職人の作品

金沢仏壇はそれぞれに伝統工芸として素晴らしい腕を持つ7職(木地師、宮殿師、木地彫師、箔彫師、塗師、蒔絵師、金具師)の職人さんが分業体制で作っています。

今回の展示では、金沢仏壇青年部から木地彫師の齊藤美知代さんが月の満ち欠けを表現した温かみのある香炉や、廃棄される仏壇の細工をリメイクしたサンキャッチャーなどを展示しました。

香炉の側面にも手彫りで見事な模様が表現されているのが素敵です!

塗師の山田晃輔さんは色合いがキュートなミニ仏壇「彩(いろどり)」を製作しました。

ラベンダー色のパステルカラーで、仏壇のイメージをいい意味で覆します。

さらに現代社会にアプローチしていて興味深いのは、塗師の池田拓朗さんの3D厨子とスマートフォンも遺影代わりに飾れるミニ仏壇「祈りの小箱 キューブ」です。

持ち運びができるお仏壇という発想が、モノや場所に縛られない現代人にも受け入れやすく、面白いです。

塗師の塗師岡聖治さんは金魚や折り鶴など、新しいデザインにこだわった新型金沢仏壇を展示しました。

仏壇を閉じた時に表面になる戸板だけでなく、戸裏や引き出しなど中も明るいイメージの装飾が施されています。

塗師岡さんが出品していた「骨壺位牌」もとても素敵で、中に指輪や小さい遺骨などを入れられるのです。

遠方などで墓参りに行きにくい人や手元にお骨を持っておきたい方も、お部屋に違和感なく置けていいなと思いました。

小さいながらも漆と螺鈿塗りの美しさが煌めいて、都市部などでもニーズがありそう!

塗師の山本拓さんと蒔絵師の藤枝政和さんが分業して製作した作品も豪華絢爛で見事です。

4人の異業種作家の作品

今回金沢仏壇青年部以外で参加した4人の作家さんたちも個性豊かです。

画家の倉林雅幸さんは猫や犬、オオカミなどを型取った香炉や香立を製作しました。

1匹1匹の表情に愛嬌があって、今にも「にゃーご」と言い出しそう。

九谷焼作家の髙辻あいさんは九谷焼の仏飯器やろうそく立て、一輪生けなどを出品。

沈金師の芝山佳範さんは伝説の生き物をテーマにした4種類の沈金額を並べました。

古い襖を幻想的なイラストで「復活」させたつなさんの作品も魅力的です。

展示会のタイトルどおり、金沢仏壇や伝統工芸を今の時代にあわせて「再生」し、消えゆくものを新たな形で「復活」させる若手職人さんの挑戦を今後も注目していきたいと思います。

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企画展「再生と復活」(開催終了)
主催:金沢仏壇商工業協同組合青年部
開催期間:2025年2月19日(水)~3月2日(日)
開催場所:金沢・クラフト広坂
参加作家:池田拓郎、山田晃輔、塗師岡聖治、齊藤美知代、山本拓、藤枝政和
芝山佳範、髙辻あい、倉林雅幸、つな

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線、動画配信サービスのまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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