読者投稿のすゝめ
ライティングは誰かに読んでもらわないと始まらない。不特定多数に読んでもらうには、どこかに出力しないといけない。かと言って、ブログやサイトを立ち上げても直ちにアクセス数が伸びるわけじゃないし、実績が浅いうちはすぐに仕事をいただけるわけでもない。
実績積みに何か良い方法はないか、と考えた時に「新聞・雑誌などの読者投稿欄に出す」ことを思いついた。特に一般紙の読者投稿欄なら門戸も広いし、1日に数本の原稿が載るので掲載される可能性は高い。加えて、原稿は必ず社内の担当者が目を通して添削・修正してくれる。つまり、ライターを目指している人たちにとって「クライアントの媒体特性を想定した原稿作成を練習する場」としてもピッタリである。新聞社の立場から見ても、投稿はいくつあっても構わないだろうし、近年の読者層の高齢化を鑑みて若者からの投稿だとなおウェルカムのはずだ。
…ということを実証するために、地元・宮城県の最大手である河北新報の「声の交差点」コーナーに応募することにした。どの新聞社も投稿時のルールがあり、河北新報の場合は字数が400〜500字程度・テーマは自由(たまにお題を設けることもあるらしい)とのことなので、それに合わせて原稿を作成した。
私が今回選んだテーマは「台風19号接近時における東京都内の様子」。作成した原稿を要約すると「私たち東日本大震災の経験者らは『災害ナメないで、備えをきちんとしましょう!』って全国に発信してきたはずなのに、都内のスーパーの様子を見ると観測史上最大の台風が上陸直前にもかかわらず東京の人たちにあまり危機感を感じられませんでした…」という内容だ。このテーマを選んだ理由は、河北新報は東日本大震災以降、特に「災害対策」「防災・減災」「伝承」というテーマに高い関心を寄せていることに加えて、東京にいる東北人からの情報提供にニュースバリューを感じてくれるのでは?と予想したからである。あれこれ言いたい、もとい書きたい欲を抑えつつ、なんとか原稿を490字にまとめてメールで送った。
2日後、担当のKさんという方から「岩崎さんの原稿を採用しますので、詳細をもっと教えてください。修正して掲載します」と電話をいただいた。電話取材では「なぜ岩崎さんは台風上陸直前にスーパーに行ったんですか?」「この文章について、そのように感じられたのはなぜですか?」など、私の言葉足らずな部分を補うような内容を尋ねられた。
それから5日後に原稿が紙面に載った。Webで修正された内容を確認すると、トータルで600字くらいになっていただろうか。字数が確実に増えたが、Kさんのおかげで無駄な文言が削ぎ落とされて意図したかった部分がより鮮明になっていた。文章のテンポも格段に向上している。だからと言って原型がなくなっているわけではない…。要するに「いい感じ」にまとめてもらったのである。
ライターは朱入れされて成長するもの。今回の件でいろいろと勉強になった。Kさんに心から感謝している。そして次に投稿する時は、修正される箇所をもっと減らして原文ママで載せてもらえるように精進しよう。
余談だが、新聞は情報の信憑性を保つために実名とおおよその住所、年齢を公開するのが基本である。私も何一つ包み隠さずに載ったが、これにより河北新報を購読している実家の家族に即見つかったのは言うまでもない。恥ずかしがり屋さんや、なんらかの事情で本名を出せない人はこの点だけ気をつけていただきたい。