変態にだってなるよ、そりゃあ…
芸能人の写真集撮影などのメイキング風景、あるいは著名なカメラマンのドキュメンタリーなどを映像で見ると、撮影者が時々異様なテンションになっている光景を見かける。特にグラビアアイドルなどの撮影では「変態か!!」と思うようなリアクションをされている方もいる。いくらモデルさんにいい表情をしてほしいからって、あれはオーバーすぎるのではないか…と、軽蔑の念を抱くこともあった。
先日、自社媒体で使用する写真を撮影する際に、はじめてモデルさんをお願いした。知人を介して紹介していただいた芸能プロダクションから出演を快諾してくださった方を派遣していただいたが、芸能界を目指している人は一般人と比較してまずオーラが違う。なんというか、キラッキラしていて華があり、それでいて礼儀正しく人柄も良い人たちばかり。「こ、こんなにハイレベルな方に来てもらえるなんて…」とカメラを片手に頭を抱えた。静物・無機物ばかりを多く写し、人間はプライバシー保護の観点から極力顔が映らないような撮影ばかりをしてきた自分が、そんな方たちにカメラを向けることに対して超絶申し訳ない気持ちになった。
そんなハイレベルなモデルさんたちだから、撮影には一切困らなかった。なぜなら簡単なポーズを取るだけでビシーッと決まり、表情もキラッキラ輝いていたからである。ちょっとシャッターを切るだけで使えるカットが即完成。人間の撮影経験の少なさは、被写体の「タレント(talent:才能)」で救われた。
で、気がつくと「あぁ〜!!今のめちゃくちゃイイですね!!最高っす!!撮影させてもらえて幸せっす!!おっほほぁーい!!」と一人で奇声を発しながら騒いでいた。振り返ると、あの時の自分は変態の一歩手前まで達していたと思う。モデルさんたちには半笑いされた。そして通りかかる人から次々に不審な目で見られたが、そんな人たちを捕まえて「このカットいいでしょ!?」と自慢したいくらいだった。
そんな経験をしたから今だからこそ、冒頭でお話しした撮影者たちの気持ちがわかる。ファインダーを通して見たモデルさんの姿とシャッターを切った瞬間の恍惚感、出来高を確認した時に蘇る感動、そしてそんなに素晴らしいものを撮影した当事者だけが独り占めできる贅沢…。いや~、人物の撮影っていいものだ。癖になりそう…。