すべてを結びつけるミュージカルの力、「キレイ」が4度目の上演

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 松尾スズキが東京・渋谷のシアターコクーンで2000年に初演した大人計画の舞台「キレイ~神様と待ち合わせした女~」が4度目の上演中だ。10年間監禁されていた少女が仲間との絆を育みながら、「ケガレ」と名乗って忘れてしまった過去と向き合う物語。新キャストなどによってその歴史に新たな頂点を極めようとしている。

 ケガレ役は乃木坂46の生田絵梨花。主要ミュージカルへの起用が続き、本格的音楽教育による基礎の上に立つ表現力は、「純粋」と「荒廃」という両極端の要素を溶け合わせることに成功。神木隆之介ら他の客演陣も実力をいかんなく発揮していた。

 今回「なぜミュージカルであるべきか」がはっきりしてきた。音楽にはいろんなものをつなぎ合わせて融合させる力がある。どんな突飛な設定も優しく包み込むし、どんなに異質なもの同士も結びつけられるから。

  演劇へのリスペクトも満載だ。「キレイ」のテーマは「マクベス」で主人公をそそのかした魔女たちの「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉に重なるし、荒廃した戦場をゆく人間たちは核戦争後の荒野を旅する男女を描いた名作「寿歌」をほうふつとさせる。鈴木杏が演じる役柄には、過去作品の仕草と思えるものが潜ませてあるなど、思わずにやりの連続。   

 これだから演劇鑑賞はやめられない。

 「キレイ~神様と待ち合わせした女~」は12月29日まで東京・渋谷のシアターコクーンで、2020年1月13~19日に福岡市の博多座で、1月25日~2月2日に大阪市のフェスティバルホールで上演される。(舞台写真撮影:細野晋司)

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
阪 清和
共同通信社で記者として従事した30年のうち20年は文化部でエンターテインメント分野を幅広く担当。2014年にフリーランスのエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・新聞・広告媒体などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アートに関する批評・インタビュー・ニュース・コラムなどを幅広く展開中です。パンフレット編集やイベント司会も。

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