2020.06.16
其処ここに流れる
金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお氏
金沢市内では、至る所でよく水に出くわします。
川というには細いが、側溝というには太い。いわゆる「用水」。
金沢には55の用水が流れているそうで、ほかの都市に比べても数が多いそう。
ある程度の間隔で橋が架けられ、向こう岸に渡るにはそこまで歩かなくてはいけない。
車なら目的地が目の前にあるのに、用水があるので遠回り…なんてこともよくあります。
少し面倒なときもあるけど、天気が穏やかな日や気持ちにゆとりがある日は、煌めく流れを見てやっぱり水はいいなぁなんて思ったりする。
金沢の中心部だけでも、其処ここに水の流れがあって、それぞれが違う用水だったりします。
兼六園や21世紀美術館のあたりを流れる「辰巳用水」。
武家屋敷通りを流れる「大野庄用水」。
「鞍月用水沿い」に飲食店が軒を連ねる香林坊・せせらぎ通り。
辰巳用水は江戸時代・加賀藩が400年以上前に、現代の技術でいうところの「逆サイフォン工法」を用いて工事をした珍しいものだそうで、鞍月用水はお城を守るお堀としても重要な役目を持っていた歴史があるなど、ひとつひとつにストーリーがあって面白いです。
しかし、道路拡張や居住区域の拡大などで長らく蓋がされていたり、用水自体が消失の危機に瀕していたりした時期もあったそう。今から20年ほど前に用水を保全するための条例ができて、今のように水の流れを大事にする街並みづくりが重視されています。
身近な水の流れひとつ取っても、当たり前はないのだと感じます。
たまには「この水はどこから来てどこへ行くのかしらん」と立ち止まってせせらぎを眺める時間も、心の豊さや感覚を整えるには必要ですね。
プロフィール
ライター
しお氏
ブランニュー古都。
ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。
タウン情報サイトの記者などをしながら見つけたもの、感じたことをレポートします。
てんとうむししゃ代表。