公演は中止でもコンサートがやって来る、「ジャージー・ボーイズ」ファン大歓喜

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 日本初演でオリジナル公演を凌駕していると感じる作品にはなかなかお目にかかれないが、ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」日本人キャスト版は違った。光と影が織りなす豊かな奥行きを表現し、生きること、歌うことの瑞々しい意味合いを描き出すことに成功していたからである。だからこそ、今年多くの人が心待ちにしていた再々演が新型コロナウイルスの感染拡大のため全面中止になったことは残念だった。しかしそんなファンのもとに届いたのは「ジャージー・ボーイズ イン コンサート」開催の知らせだった。(写真提供:東宝演劇部=2018年公演から)

 

 「ジャージー・ボーイズ」は「フォー・シーズンズ」あるいは一連の脱退連鎖を経ての「フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ」として一世を風靡した米国の男性4人組ポップボーカルグループの栄光と苦悩を描いた作品。ミュージカルは2005年に米国で、2016年に日本で初演。蜷川幸雄のもとで演出助手経験のある藤田俊太郎の演出も冴え、日本版は演劇各賞を総なめにした。2018年の再演前には世界初のコンサート版も開かれた。それが今年 718日~85日に東京・丸の内の帝国劇場で再び開催されるのだ。

 

 楽曲をコンサート形式で歌いながら、迫真の掛け合いもあるファンにとってはたまらないイベント。しかもミュージカルではフランキー・ヴァリ役の中川晃教以外は複数チームに分かれてWキャストで演じているため、舞台では共演しないチームの違う同じ役の俳優が一緒に歌うというレアなお楽しみも。

 前回コンサートでは、それぞれの役柄と素顔が入り混じったようなキャラクターでジョークを言い合う出演者たちに観客は、藤田も驚くほど大盛り上がり。その後の再演も大成功を収めているため、今回のコンサートはさらに注目を集めている。ポスト・コロナの本格的なミュージカル観劇への復帰のための助走路としても大きな意味がありそうだ。

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
阪 清和
共同通信社で記者だった30年のうち20年は文化部でエンタメ分野を幅広く担当。2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体・新聞などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アート・旅に関する批評・インタビュー・ニュース・リポート・コラム・解説などを幅広く執筆中です。パンフ編集やイベント司会、作品審査も手掛け、一般企業のリリース執筆や広報・文章コンサルティングも。今春以降は全国の新聞で最新流行を追う記事を展開します。活動拠点は渋谷。ほぼ毎日更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)

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