職種その他2017.07.05

ミッション3 ペンギンの赤ちゃんの名前を付けろ!

ミッション3
電通第5CRプランニング局 クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター 門田 陽

三度目の正直指令(正直かどうかはともかく)は至ってシンプル。すみだ水族館で4月19日に生まれたマゼランペンギンの赤ちゃんの名前が公募(2017年5月7日~5月31日)されました。そこでクリエイティブ探検隊でこの名前を考えズバリ名付け親になれ!というものです。この指令はいわゆるネーミングですから、僕の本業(コピーライティング)に限りなく近いのでやりやすいようでいて、結果がはっきりするので気分は複雑。でもせっかくですから、ぜひ選ばれたい。本腰を入れます。

まずは、与件の整理です。すみだ水族館のホームページを参考にいわゆるクライアント(この場合はすみだ水族館)の思いを探ってみました。するとこのペンギンの名前募集はここのところ毎年行われていることがわかりました。今年で5年連続です。そして「元気な東京」をテーマにした名前を付けてほしいそうです。これでだいぶ輪郭がわかってきました。赤ちゃんについてのプロフィールは生まれたときの体重は85g(へー、小さいな)、お父さんの名前はカリン。愛妻家だそうです。お母さんはカクテル。こちらは肝っ玉母さんと紹介されています。

つぎに今まで選ばれた名前から傾向を見てみます。過去問での対策です(笑)。2013年は双子で「まつり」と「はなび」。2014年は「はっぴ」。2015年は「たいこ」。そして2016年の去年は「ふうりん」。因みに「ふうりん」は応募12,727通の中から選ばれたそうです。多いな、応募数。しかしどれも選ばれた名前のトーンは似通っていますね。これはかなりヒントになります。

ここで今回は全国に散らばっている隊員達(東京は西畑・和田・野口・高橋・梅澤各隊員、大阪は嶋岡隊員、名古屋は中島隊員、福岡は小川隊員)にも協力を仰ぎ名前を考えてもらいました。これは本業のネーミング作業の場合、蓄積されたデータも取り入れさらにその仕事に係る様々な部署の人たちのアイデアも入れるやり方です。実際の仕事ではオススメは絞りますがネーミング自体は100案以上出すことが多いです。彼らから集まった名前は「わさび」「anime(アニメ)」「アントニオ」「おちゃちゃ」「あかり」「みこし」「レモン」「ビタミン」の8つ(※写真①)。福岡の小川隊員考案の「アントニオ」はアントニオ=猪木=元気!という意味だそうです(ハハハ)。僕の第一印象では「みこし」と「anime(アニメ)」はわりといいかなと感じました。

写真①

これらのことを参考に、いざネーミングです。僕はふだんネーミング作業をするときは大きく3つの方向から考えていきます。一つ目は王道。これは何の仕事でもそうでしょうがまずは確実に直球ど真ん中。誰もがその通りと思うもの。裏返せば誰もが思いつくのでつまらないといえばそれまでかもしれませんが、嫌われることはないものです。二つ目は応用。王道で考えたものに少し工夫を加えたりトンチをきかせたりするものでこの型は日本人にはウケがよく、採用される率も高い気がします。ただやり過ぎると理屈っぽくなったり、鼻についたり癇(カン)に障ることもあるので注意が必要です。そして三つめは破道。これはその名の通り「理」ではないところなので説明は難しいですね。ひらめきとも言えるし、ふと浮かんだ面白い発想。思い付きです。この王道、応用、破道の三つが2:2:1の割合ぐらいで提案できるといいな、といつも思っていますが実際のケースで破道はそんなには出ないし出しません。

今回は約3週間考えて自分のなかで100案に絞り、隊員達の8案とは別に僕のものを5案出すことにして(今回のケース、あまりに多く出すのは節操がないので)水族館に向かいました(※写真②)。そういえばこのときまでまだ肝心の赤ちゃんに生で会っていませんでした。ネットで見てすっかり会った気になっていたのです。イカンです。ライブが大切!

写真②

で、驚きました。行ったのは5月28日なのですが、まずはペンギンの赤ちゃん見たさの大行列、45分待ち。しかしそれよりも驚いたのは赤ちゃんが想像より相当大きかったのです。生まれたばかりは85gがこの日なんと2300g。わりとふつうのペンギンでした(※写真③)。で、この行列に並んでいるときになんとなく勢いがある名前がいいなと思って僕が出した5案は「げんき」「ときお」「わっしょい」「ごりん」「ゆりこ」です(※写真④)。名前を書くコーナーでは子どもたちが嬉々として鉛筆を走らせています。ちょっと覗いたら「プリン」や「ギンちゃん」というかわいい名前を書いていました(※写真⑤)。

僕の5つのネーミングについて。
①「げんき」:王道案です。クライントの注文通りのベタ案。ですが、意外とこういうのが決まることもあるのです。1994年に三菱自動車パジェロの軽自動車版の名前が公募されました。確か数万の名前の中から選ばれたのが「パジェロミニ」。冗談はやめろ!と全国から相当突っ込まれていましたもん。

②「ときお」:ほぼ王道案。説明不要かと。

③「わっしょい」:破道に近い応用案。実はこれは列に並んでいるときに思い付いたのです。ほんとは「いなせ」で出す予定でしたが、このほうが勢いあっていいなとその場で変えました。

④「ごりん」:応用案。オリンピックに引っ掛けたのですが、やや時期を逃した感もあるなと思いながら出しました。

⑤「ゆりこ」:ま、これはおまけの悪ふざけ。

以上を全てペンネーム「探検隊」で出しました。

それからしばらくして、ペンギンのことを忘れかけていた6月23日のニュースを見てビックリ!ニッコリ!!赤ちゃんの名前が「わっしょい」に決まりました。的中です。的中というと馬券みたいですが、応募総数13,313通ですから、かなりの万馬券(何の商品ももらえないけど)。いや~、よかった。ほっとした、というのが本音です。結論。世の中、論より思い付き!!!(※写真⑥)

写真⑥

ところで、ちょうどこの指令に取り掛かっているときに上野動物園ではパンダの赤ちゃんが生まれました。過去、上野動物園のパンダの名前は一番最初の「ランラン」「カンカン」からその後「フェイフェイ」「ホアンホアン」「チュチュ」「トントン」「ユウユウ」「リンリン」「シンシン」「リーリー」です。傾向は明らかです。僕は自分の名前が陽なのでこの赤ちゃんが「ヤンヤン」になればいいのになぁと願っています。

続きを読む
TOP