「思春期からの数多の映画が、ボクの血肉や骨、そして、心まで作ってきたように思う。そうとしか考えられないのだ。」

「映画が生涯の友どころか、近いうち、自分で撮る日も来るだろうと夢に見たのもその時だった。」

「どうしてこんなに現実は退屈なんだろう。そして、現実はつまらないか、哀しいか、だけだった。」

「自分の映画を作っていこう。そうしないと自分の心が、自分の思想がどこにあるのかも分からなくなる。80年代の撮影所システムで学んだことだった。」

ストーリーや銃器アクション、海上でのキャメラワークにこだわったニューシネマを撮りたかった。ボクには「映画こそ命」だった。瀬戸内の海で朝、昼、夜なく、キャメラを回した。

べタな娯楽モノしか作らない邦画界の横っ面を張り飛ばしてやりたいとボクの血も騒いでいた。「海賊でもやって一旗揚げて、…どうせおまえもわしも一遍も二遍も死に損ねた身体じゃ」という原作の一節はボクの気分を代弁していた。

鳴り物入りの娯楽作品を撮らされることになり、何もかもが、意外な展開に？

“ホン屋”と旅館にこもってシナリオの骨を決めていく、映画作りの至福の時間

“活動屋”とは何だ。寝ても覚めても映画のことばかり考えて生きていた

「フィルムでばかり撮ってきて、ビデオワークは未経験だったが、決めギャグをこね回して吟味する現場の遊び方を知った、いい機会だった。」

「映画で見て憧れたニューヨークに渡って、色々と思った。映画のアイデアなど何も湧いてはこなかったが、とてもいい息抜きだった。」

映画という祭りが終わると、虚しさしかない。祭りは一期一会。どこで封切ろうと結果がどうだろうとボクには無縁だった。

よっし、肚は決まったぞ。映像とは、観客に投げつける不安、緊張感、つまり、サスペンスなんだ

たかがミステリー、されど映像芸術。それじゃ、ヒッチコックかよ

映画は、客たちの慰みものでもエンタメでもなく、監督が自分と向き合うもの だというのが、少し分かってきた頃だった。

メジャー映画に出ていくのは、まるで内海から太平洋に船出する気分だった。気力を使い果たし、得たもの、失ったもの

『果てない映画への夢が募り始めた頃、ついに大手の東映から、製作依頼の電話がかかってきた』

『「社会」と「学校」、「親」と「家族」、「階級」と「カネ」、「友だち」との 関わりをまるごと描くのが、井筒和幸製の不良劇』

映画哲学がオモシロかった日々

銀幕の中の人間は何をして日々の怨憎哀楽を生きるのか？